2011年3月30日水曜日

原発1基分をまかなう太陽光発電システムは

Q.原発1基分の発電電力量をまかなうためには,
太陽光発電はどれくらい必要か.

少し試算してみたいと思います.

<試算>

※原子力発電所の設備利用率を考慮して計算し直しました(3/31)
JULYさん,どうも有難うございました.

原子力発電所一基分相当の100万kWを
太陽光発電でまかなうとします.

一般家屋の屋根に設置するパネルで
供給すると仮定します.
1件あたり4kWの太陽光発電を設置するとすると,
必要な屋根の面積は,およそ28m^2程度.
(太陽光パネルのメーカS社の仕様より計算.
出力163Wのパネルの面積は1.15 m^2.
100万kWでは,およそ700万m^2(=700ha)必要.
東京ドーム150個分.
後述の通り,466.9万kWでは,700個分に相当)

コストはだいたい1kWあたり50万円とすると,
一軒あたり200万円かかることに
なります.

さて,100万kW分ですから,トータルでは,

100万kW * 50 万円 = 5000億円

のコストとなり,それらは,

100万kW / 4 kW = 25万軒

の家庭が分担して負担することになります
(繰り返すと,1軒あたり200万円).

しかし,これは設備容量(発電できる最大能力)が
100万kWになったに過ぎません.

原子力発電所は,24時間100万kWを定常的に
出力することができますが,太陽光発電では
そうはいきません.
夜は運転できませんし,朝夕は出力が落ちます.
雨が降っても発電できません.
また季節によっても変動します(5月くらいが一番
発電量が多くなる).
また,100%の発電電力が得られることなんて,
1年間に数えるだけです.

---- (以下,稼働率を考慮して計算を変更しています.3/31)

実際には,原発の稼働率は60~75%程度です.
最近は地震や故障によって稼働率が落ちていますが,
何もなければ70%はいくと思われます.
(欧米はそれ以上の稼働率)
そこで,総発電量で比較することにします.

年間設備利用率(定格容量にくらべ,年間で
どのくらいの発電量が得られたかの指標

設備利用率
= (1年間の総発電電力量[kWh])/((定格出力[kW])*(1年間[h]))


で表すと,太陽光発電は,15%はなかなかいかないと思います.
(S社HPで,神戸市に設置した場合を計算すると12.7%だった)

したがって,100万kWの原発の発電電力量(稼働率70%)を
まかなうだけの太陽光発電の設備容量は,
設備利用率15%と多めに見積もっても,

100万kW * 0.70 / 0.15 = 467 万kW

と,4.67倍は必要という計算になります.
(この場合,25万 * 4.67 = 117万軒の住戸が
導入しなければなりません.
1軒平均3人が住んでいるとすると,それだけで
350万人の大都市ということになります)

コストは,太陽光発電だけで

467万kW * 50万円 = 23,350 億円

2兆円を越えるコストということになります.

実はこれだけでは足りません.
晴れた日中に発電した電力を,
雨の日や夜に使用するために,
電力貯蔵装置が必要となります.

残念ながら電力は貯めておくことは
基本的にできません.
大規模な電力を貯蔵する装置としては,
揚水発電所があります.
高所のダムの貯水池から水力を得て,
昼間のピーク時などに発電し,
夜間は,水車をポンプとして用いて
低所の貯水池から高所へと水を送り,
電力を位置エネルギーとして変換して
貯蔵しておく方式です.
日本には,いくつもこの揚水発電所がありますが,
(夜間のポンプ出力を調整することによって
負荷を調整する機能を持たせている
可変速揚水という技術は日本発のものです)
全体の発電量から見ると微々たるものです.
また,立地の問題で今後建設するのも
難しいといわれています.

そこで,二次電池の開発が進められています.
大規模なものでは,従来の鉛蓄電池の他,
ニッケル水素,リチウムイオン,ナトリウム硫黄,
などの電池が開発されており,充電,放電が可能です.
化学エネルギーに変換して電力を貯蔵することになります.
携帯電話などに使用されている高性能な
リチウムイオン電池は身近なものですね.
しかし,これが価格が高いのです.
大容量のものを作ろうとすると,かなりのコストが
かかってしまいます.

そこで,各家庭でバッテリを分散して持つことにします.
あるメーカが開発している蓄電用標準電池システムは,
1ユニット1.6kWhです.
一般家庭で1日の消費量を10kWh程度とすると,
3ユニットで半分をまかなえます.
残りは電力会社がなんとか調整することにして
3ユニットを家庭が負担して持つことにします.
1ユニットは50万円ですから,3ユニットで150万円.
太陽光発電システム200万円にさらに150万円
コストを負担することになります.
1軒あたりのトータル設置コストは350万円です.

全体では,467万kWの設備容量分に対して
バッテリを用意するとすると

23,350億円+150万円 * 116.75万軒 = 40,862億円

です.4兆円近くのコストが必要となります...

コスト低減の解決策として,
メガソーラーと呼ばれるような,
広大な土地に太陽光パネルだけ並べる方式も
考えられますが,
パワーコンディショナと呼ばれる
半導体電力変換器は集約されて多少
コストは低減されるにしても,
パネルを設置するための
(台風や積雪に耐える強度を持つ)架台が必要で,
これがまた大変にコスト高なのです.
住宅用よりもむしろコストがかかると思われます.

原発1基が4000億円程度で建設されることを思うと,
発電量に対して太陽光発電システムは
多大な設置コストがかかることがわかります.

今後,太陽光発電は導入を進めなければならないので,
なんとか解決策を模索していかなければなりません...
技術的には解決できても,コストが見合わなければ,
導入は進まないのです.
今後は,太陽光発電の効率向上,二次電池の性能向上と
価格低減が望まれます.

今日は,設置コストの問題だけでしたが,
その他,発電電力買い取りの問題,
配電系統の電圧制御に与える影響の問題,
事故時の一斉解列の問題なども
太陽光発電が大量導入される場合には,
考えなければなりません.
それは,また次の機会にお話ししたいと思います.



*コメントをいただきまして,
原発の稼働率70%を考慮して計算し直しました(3/31).
つまり必要な容量,コストは当初の7割になりました.
>JULYさん,コメントどうも有難うございました.


*ピーク電力,昼夜間の電力変動については,
ここでは考えていません.
たとえば梅雨の時期には,
残念ながら上述のバッテリ容量ではとても補償できる
ものではないからです.
太陽光発電では,原子力のベース電力の代わりを
つとめることは,大変難しいのです.



※お詫び

すみません.当方のミスで,下記の2つのコメントを
消してしまいました...

以下に,回答とともに示します.

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「田中」様からのコメント

>>原子力発電所は,24時間100万kWを定常的に出力することができますが,太陽光発電ではそうはいきません.

ということですが、
昼間の電気使用量と夜間の電気使用量は違いますので
定常的である必要は必ずしもないのでは?
将来的にはスマートグリッドの可能性もありますし。
また高野雅夫氏(名古屋大学准教授)は
「2009年の原子力以外の発電による発電量は、
年間総発電量から原子力発電による発電量を引いた、
957-278TWh=679TWh。
これは実は1985年の総発電量584TWhよりも多い。
つまり1985年当時の電力消費量になれば、
原子力発電所を全部止めてもやっていける。」
とも述べています。
ttp://blog.goo.ne.jp/daizusensei/e/4fdfb6bead84198c5ecbd05030cc142d

東大名誉教授の安井至氏は
日本には地熱発電の可能性が十分にあると語っておられます。

洋上浮体風力等の他の次世代エネルギーや
家庭用太陽光発電システムを組み合わせれば
今後も絶対に原発が必要とは言い切れないように個人的には思います。

少なくとも次世代エネルギーの活用研究と同時に
全ての原発を一気に無くすのではなく、
徐々に廃炉にしていく方途もあるはずです。

--- 私のコメントです.

スマートグリッドであっても,太陽光発電の電力変動を
補償するためには,電力補償装置は必要です.
定常的である必要はありませんが,
平滑化する必要はあります.

1985年当時の電力消費量に戻すことは大変だと思います.
もちろん,省エネがそこまでできればいうことないのですが...

地熱発電や洋上発電はぜひやっていただきたいと思います.

自然エネルギーは必ず導入していかなければならないと思っています.
私は,この記事で自然エネルギーの導入にはコストを必要とすることを
まずは確認したかったのです.



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「JULY」様からのコメント


ピークの電力と総発電量の話がごちゃ混ぜになっている感じがするのですが....。

100万kw の電力を満たす事だけを考えれば、夜間を含めた太陽光発電の設備利用率 15% はなく、昼間の発電量が平均で定格の何%ぐらいになるか、で考えたほうが良いように思います。

逆に総発電量を考えるのであれば、原発側の平均稼働率が 60% 程度である事を考慮に入れる必要があるのでは?

総発電量での比較は、原発の平均稼働率や、他の発電方式に比べて、発電所と消費地が離れていることによる送電ロスを入れても、同様の計算で2兆円規模になると思うので、現時点では、初期コストが圧倒的に高い事には違いないと思いますが、ちょっと気になりました。

ピーク電力の方は、日中のピークを賄うように太陽光発電を使えば、という人がいますが、冬場は朝夕にピークがあるので、そう簡単な話じゃないよなぁ、という感覚を持っています。

--- 私のコメントです.

おっしゃるとおりです.
上記のとおり,原発の稼働率70%を考慮して,
計算し直しました.
ご指摘どうも有難うございました.

ここでは簡単のために総発電量を考えています.
おっしゃるとおり,ピーク電力の話はそう簡単ではありません.

16 件のコメント:

  1. 脱原発、反原発の人には、もっと具体的に、例えば太陽光発電をどこに、何カ所、誰が、どのように、どの程度のコストで、と語って欲しいですね。地熱発電所も然りです。また、1985年レベルに使用量を落とすなら、誰が、どのように、節電するのか、あるいはさせるのか、等具体的な計画を示して欲しいです。いわゆる原発推進派と言われる人も、原発が好きだから推進している人は少ないと思います。電気無しで今の生活が維持できるならそれが一番いい。でも、それが出来ないから考えている訳で。

    その具体的な計画が示せないなら、幻想ですよ。脱原発なんて。

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  2. 数十年続く原発廃棄物処理費用、と放射能もれ時の補償費もコストにいれて下さい。

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  3. コメント有難うございます.
    設備のイニシャルコストについて,簡易的に計算してもので,それ以外のコストは考慮していません.

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  4. 博史様、
    最初からお願いするのではなく、自分の時間を使って試算を示してはどうですか?

    例えば、仮に今回の事故の補償額が10兆円として、それを今の日本の原発の数、約50で割ったら一機2000億円、、とか。今後は津波対策も当然進展するでしょうし今後の発生確率を見通すのは難しい作業でしょうね。

    廃棄物の処理費用は政府が計算してるかもしれないので一度お調べになっては如何でしょうか。

    また、ランニングコスト云々と仰る方も、太陽光発電なら効率低下や清掃、インバータの寿命、等々何か示してからで無いと議論になりませんよ。原子力発電を他の発電方法と比較しようとしてるんでしよ?

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  5. 太陽光を使って水を加熱し、火力発電所のように水蒸気でタービンをまわしてはだめなのだろうか。太陽光をレンズを使って集めればかなりの熱になるとおもうが。

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  6. 太陽光発電のエネルギーを使って、水を水素と酸素に電気分解してタンクにため、夜間は燃料電池に水素と酸素を使って、電気を作れないかな?

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  7. 匿名さんへ
    いわゆる太陽熱発電ですね。データは沢山あるので是非一度ご自分で計算される事をお勧めします。仮に日本でやるなら、日光が沢山当たる平らな土地を誰かが殆ど無償で提供してくれないとコスト的に引き合わないだろうと思います。

    また、電気分解による蓄電ですが、電気分解時の効率が0.3前後しかなく、大量の貯蔵も難しい事から一般的には不利だと言われています。

    まとめると、技術的には可能です。でもコストが引き合いません。2倍も3倍も高い電気を好んで使う人がいればいいですが実際にはいないか非常に少ないのが実際のようです。

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  8. いろいろなコメントどうも有難うございます.
    種々の発電方法が検討されていますが,商業ベースにのるものが少ないのが現実だと思います.もしも,利益が出る事業であれば,国が支援しなくても世界中に広まることと思います.
    これを機にみなさんが分散電源に興味を持っていただければうれしいです.

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  9. 飯田にあるメガソーラー発電のことをご覧になられましたか?
    発電量100万kWで敷地面積1,8万㎡だそうです
    どちらのメーカーでいつの時代のもので計算されたかわかりませんが
    大きく異なっております。

    使用済み核燃料の処理や廃炉までにかかる金額も含めて計算してください。

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  10. 匿名様,残念ながら100万kWhの間違いでは無いでしょうか?地球上に降り注ぐ太陽エネルギーは1kW/m^2といわれています.1.8万m^2で100万kW発電できるとすると,入力よりも出力が越えてしまうことになります.

    今回は,あくまでも設置コストの見積もりです.ランニングコストなどの計算は困難です.

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  11. 太陽光についてなんですが、太陽光は半永久的にあるとしても、発電させる機械はメンテナンスが必要ですよね。

    現在パネルの耐用年数が15~20年ほどで、経年劣化もありますし、定期的にパネルの交換が必要になりますよね。そう考えると、ランニングコストも決して安くはないと思うのですが。

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  12. 表題の『原発1基分』に引き寄せられて、皆さんのコメントを読ませていただきました。小生も数年前から大型原子力発電所1基相当の太陽光発電設備を滋賀県の琵琶湖に設置する構想をねっています。狙いは、二酸化炭素の削減(環境問題)と敦賀原発の削減です。太陽光発電のコストは他に比して高いので、電力事業単独で考えれば不利ですが、これから持続社会へ向かう場合の手段としては一考に価すると思っています。それは工業単独ではなく、農林水産業との連携を取れば、太陽光発電の存在は高まるのではないかと。私案では、規模は、滋賀県の所帯数50万戸x3KW(単身所帯を考慮)=150万KW。これに要する設置面積は5km四方ですが、琵琶湖なら可能です。毎年10万~15万kwの設備を建設して、建設要員の雇用を確保。建設資材としてあえて木材を琵琶湖周辺の山林から調達。木材を取り出した跡の残渣を木質チップにして火力発電を平行して運転し、太陽光発電の出力調整に使う手も考えられます。これでも雇用の場ができます。森林事業への補助金という負担の削減ばかりではなく、過疎地の振興にも役立ちます。このような複合の施策が太陽光発電コスト高を吸収できないかなあ、と考えています。突然入り込みましてすみません。ちょっと観点が変わってしまいましたね。夏の暑い夜中、クーラーを絞って寝苦しい時に、思案を廻らして良いアイデアが生まれましたらご教授ください。SHIGA HIROBE

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  13. Google検索からおじゃまします。

    太陽光発電は自然エネルギーとしては最も高コストなもので、原発の代替エネルギーとして一番に太陽光発電が話題にされることに違和感を持ちます。ドイツではサハラ砂漠の1%を使うだけで地球上の半分の電力を安く提供できる太陽熱発電も開発が始まっていますが、他にもいくらでも代替エネルギーはあり、日本の技術はそういう意識の高い国で採用されています。

    ちなみに我が家は、省エネ住宅に建て替え、その高コストな太陽光パネルを屋根に載せていますが、光熱費は年間50万円下がりました。

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  14. 太陽光について調べていたらたまたまこの記事に行き着きましたが、
    太陽光をシステムを導入した人に聞いてみると、太陽光を導入した
    ことで電力に対しての見方が変わって、照明器具をLEDにしたり、
    冷蔵庫やテレビを最低限の小さなサイズのものにしたり、エアコンの
    かわりに扇風機を使ったり、アスファルトの暑くなる時間は打ち水を
    したりして、太陽パネルで得られた電力内で生活するスタイルが
    定着したという話をよく聞きます。

    日本の経済やこれからの人口の増減などを考慮に入れた発電方法を
    考えるいい機会だと思います。

    またエコブームが生む産業やメリットも無いとは言えません。
    ある電機メーカーはエコモードであることを知らせる緑色のランプ
    1個つけるだけで、同じ商品の価格を2割も値上げすることに
    成功しています。

    もともとエコを追求していたメーカーなのでカタログを見ると
    際立って性能が向上した訳ではないのですが…それもアリだと
    思っています。

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  15. 新エネルギーの活発化がエコ技術やスマートグリッドなどに波及して経済効果を生むことには大賛成ですが、菅直人の固定価格買取制度のせいで台無しですね。

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  16. 原発のランニングコストと太陽光のランニングコストは等しいでしょうか?
    また、原発は廃棄コストも考慮要素としては大きいのでは?
    導入コストばかりに目をやっても仕方ないと思います。

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