2011年3月28日月曜日

なぜ日本では風力が普及しないのか

さて,次の問題は,以下の通り.

Q. 再生可能エネルギーで,すべての電力をまかなえないのか.

原子力がこのような状況になると,
エコという単語に期待している人は,
当然こうした疑問を持つと思う.

実は,昨年アメリカで開催されたパワーエレクトロニクスの
専門家による国際会議ECCE2010において,夜に開かれた
ラップセッションにおいてのテーマのひとつがこれだった.

最初に答えをいうと,それは非常に困難である,
という結論だった.
それがたとえ,風力による電力の供給が比較的安定である
ヨーロッパにおいてでもである.
風力発電の適地が少ない日本では,言わずもがな,である.

ということで,今日の問題は以下のように
範囲を狭めて考えることにする.

Q. 日本ではなぜ風力が普及しないのか

ヨーロッパでは,偏西風のおかげで,
比較的安定な風力による電力が,
昼夜を問わず得ることができる.
それでも電力の変動は生じているし,
太陽光発電の導入もずいぶんと進んでいるから,
電力の変動幅は年々増大している.

各国それぞれではその電力変動を
吸収しきれなくなってきたから,
ヨーロッパ各国を国際的な電力系統で接続するという
SuperGridの構築も9カ国で合意されている.
今後海を渡って直流送電系統が建設されていくだろう.
そうなれば,電力を貯めることができなくても,
イギリスで発電した電力を,即時にスウェーデンで
効率よく使うことができるようになるのだ.
(少し鉄道の電力回生に似ている)

では,日本ではどうか.

日本ではまず風力発電が難しい.
その理由として,

1) 風況が良く立地できる場所が少ない
適地(風力発電で採算が取れる場所)の多くには
既に建設されている.
もう国内の陸地に,風力発電の適地は残されていないと
言われている.
(NEDOの調査ではまだまだあるということになっているけれど)
もともと風の向きが季節や昼夜によって
大きく変わる日本沿岸には,風力は不向きなのである.
そのうえ,風車がたてる低音の騒音に対し,
苦情が集まりやすい.
また,環境破壊,バードストライク(鳥がブレードに当たって
しまうこと)などの問題もあって,
昔ながらのエコのシンボルというだけでは
風車は歓迎されなくなっている.

2) 台風,雷などの影響が大きい
日本には,台風がある.
台風は強い風だから,ますます発電ができて
良いではないか,と言いたいところだが,
実際には,風車はある風速以上の風が吹くと,
機器の安全のために,運転を停止するのが普通である.
だから,許容できる風速の範囲を越えてしまうと,
発電はできないのである.
台風のときは,大抵発電はお休みである.

また,日本は雷が多い.
日本海側の冬季雷などは,落雷の
エネルギーが大変大きく,ブレードに落ちようものならば,
ブレードは破損してしまう.
現在,大型風車は,回転直径はジャンボジェット機
(ボーイング747)ほども大きいから,
大変高価(~5000万円とも言われる)である.
そして,もっとコストがかかるのがその交換費用.
なにせ,風車が立っているのは,山の中の僻地なのだから.

3) 洋上発電(海の上に風車を設置し,
発電電力を陸地に送る方式)は,漁業権の
問題などがあって,実現が難しい.

ヨーロッパでは,洋上発電というのは,
すでに実用化されている.
しかし,日本ではほとんど実用化されていないのではないだろうか.

また,この洋上発電というのがいろいろトラブルが
発生しやすい.
風力発電機には,増速機(ギア)をつかっているけれど,
洋上ということで塩分を含んだ水にさらされて,
やっぱり問題が起きる.
もちろん,電気的にも問題は起こりやすい.
そして,修理が洋上ということでまた大変なのである.
ヨーロッパでは普及したというけれど,そういう理由で
今ではあまり人気がないとのことである.

4) 風力発電機の出力が不安定である.
風車を設置しても,安定して風が吹くわけでなく,
文字通り風まかせな不安定な電力となる.
これが一番の問題である.

系統が大きく,風力発電による電力変動の割合が
小さければ,問題はない.
しかし,風力発電の割合が大きくなってくると,
その変動の悪影響が出てくる.

電力が安定しないとどうなるか.
電力会社は,周波数や電圧の維持が困難となり,
最悪,停電を招くことになる.

たとえば,原子力発電所一基分程度の100万kWを
ある地方の風力発電ファームでまかなえたとする.
そこに台風がやってくる.
あるいは風が急に止まったとする.
そうなると,当然風車群は運転を停止する.
電力会社から見れば,突然原子力発電所一基が
解列したのと同じ影響がある.

それをうけ,電力会社が電力不足を補おうとして,
他の火力発電所の出力を急いで立ち上げた頃に
また風が吹き始めたら,
今度は電力の供給過剰で周波数が上昇してしまう.
すると今度は,風力発電機がつぎつぎと解列していくことになる.
電力系統は大変な状況になって,
最悪大停電につながってしまう...
(2006年の欧州大停電は,風力発電620万kWが一斉に解列
したことが原因だと言われている)

系統を大きくすれば,その影響は小さくできるから,
ヨーロッパのSuperGridは効果的に働くだろう.
しかし,日本は各電力会社が独立に運用するのが基本である.
系統が許容できる風力発電の出力は限られているのである.
だから,北海道や四国などでは,すでに風力発電所の
系統への連系が制限されているはずである.

この電力変動を抑制するためには,
電力貯蔵装置が有効なのだけれど,
これが高価で,かつ大規模なものの実現が難しいのである.
風力発電は,発電コストが10~25円/kWh程度と言われ,
再生可能エネルギーの中で,採算が取りやすいものと
言われているのに,高価な電力貯蔵装置を用いなければならない,
となると全くビジネスとして成立しなくなってしまう.

というわけで,現状日本では風力発電が
普及するのは難しいことになっている.
ヨーロッパのように風力を日本も導入すべきだ,という議論が
あるけれど,なかなかビジネスとして成立するのは
難しいようである.
日本は,風力に対しては国土が狭すぎるのかな,と思う.

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