2010年3月16日火曜日

名槍「日本号」,国宝「日光一文字」

少し前の話になるけれど,3月4, 5日は
電気学会 半導体電力変換研究会
(電力技術・電力系統技術研究会と合同開催)に
参加するため,福岡工業大学に出張した.

研究会の終了後,少し時間がとれたので,
福岡市立博物館に出かけた.
博多駅からバスで30分程度.
バスの中は,福岡ドームで行われる
オープン戦へ行く人と,
韓国からの観光客で一杯だった.
途中,韓国の人から道を尋ねられたりして,
プチ・コミュニケーションをとる.

私が福岡市立博物館に足を運んだ理由は,
国宝「日光一文字」を見るためである.
日光一文字といえば,名刀の誉れ高き太刀で,
丁子乱れの刃紋美しく,
たしかに見るからに豪快な姿であった.
見ていることこちらの姿勢まで
スッとしてくるような真っ直ぐさが感じられ,
いくら見ていても飽きない.
ただただ,ため息をつくばかりだった.

もちろん,この博物館は「金印」の所蔵で有名で,
当日私もその姿を拝んできた.
志賀島から掘り出されたとされるその金印は,
いまだに煌々と光っていて,
鏡に映されて見ることができる印字も
はっきりとしている.
これが2000年近くも前にできたものとは思えない.
(だが2000年近くも前の人工物なのだ...)
思わず,おみやげの金印グッズを買おうとしたくらい.
(結局,おみやげ品のあまりのチープさに断念)

しかし,この日最も印象に残ったのは,「日本号」であった.
日本号といえば,「酒はのめのめ,呑むならば」という
黒田節で有名な名槍である.
穂先は三角で鋭く,片側の樋には
不動明王の剣に巻き付く龍が刻まれている.
柄は,長方形に細かく刻まれた螺鈿で美しく飾られて,
中央部に向かって緩やかに膨らみ,
その持ちやすさが見ていても伝わるようである.
芸術品としか思えない美しさ.
これが人の命を奪うための器具なのかと思う.

この槍を呑みとった母里は,福島正則の再三の返却の
依頼を断りつづけ,しかし,合戦のときには
必ず携えて出ていったという.

武将は合戦の場で命をなくすことを
常に覚悟していただろう.
たとえ命を落すことがあっても,
合戦は「ハレ」の場なのである.
鎧や槍などの武具は,武将にとっては
自分の散り際を飾る「ハレ」の衣装だったのである.
そして,死に装束でもあるのである.
そう思いついて,螺鈿に輝く日本号を見ると,
これを握って馬を駆っていた母里の心が思いやられる.
本当の意味での「勝負服」だったのだ.

翌週帰阪して,研究室の学生に「日本号」の話をする.
しかし,彼らは「黒田節」さえも知らないという.
ハァとため息.

#志賀島にあったという文殊菩薩像も素晴らしかった.
志賀島は文殊信仰の島である.

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