2010年3月29日月曜日

絵画の庭 ~ゼロ年代日本の地平から~

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現在,大阪中之島の国立国際美術館で開催されている
「絵画の庭 ~ゼロ年代日本の地平から~」に
足を運ぶ機会があった.

現代美術というのは,なにかしら私の心を惹くものがある.
もちろん,これまでの芸術も機会があれば鑑賞するのに
やぶさかではないのだけれど
(理解出来るかどうかは別にして),
現代美術という分野は,私も生活しているこの現代という
文脈の中で,芸術家が何を表現しようとしているのか,
そこに興味があるのである.
特に絵画では,すでに題材にやりつくされた感があるけれど,
それを打破するために,彼らはどのような挑戦をしているのか,
それを確かめてみたく思うのである.

展示は,草間彌生,小林孝亘,奈良美智などをはじめとする
28名の芸術家による作品が200点以上にも渡っている.
それらは,ひとりひとりの作家ごとに区分けされた
スペースに展示されており,鑑賞者はちょうど
それぞれの部屋を歩いて回るような感覚となる.
これは,単にいろいろな作家の作品が
横に並べて展示されているのとは異なり,
部屋ごとに独自の世界が展開されていて,
大変面白かった.
次の部屋に入ると雰囲気が変わるのが感じられて,
200点以上の作品を見ても飽きずに回ることができる.

先に挙げた草間,小林,奈良の3人の作品は
さすがに印象深いものだったけれど,
その他にも初めて知る作家の作品にも
いくつか心を動かされた.

たとえば,村瀬恭子の描く世界.
パステルな色使いの中に,少女の影が踊る.
言葉にできないけれど,そこにある
やさしさ,はかなさ,せつなさ,つらさ,
そうした少女的なもの(それも私たち大人が感じる
ファンタジーとしての少女的なもの)を感じる.

町田久美の線も印象的だ.
漫画的ではあるけれど,描かれたその線は,
この絵ではそうとしかありえない確かさをもって
引かれている.
美しさなどはあまり感じられず,
むしろ滑稽さ,不気味さを感じるのだが,
それらが私の心にひっかき傷をつけて,
深く記憶に残る.

また,坂本夏子の「Tiles」という作品.
歪んだシャワー室とそのタイル.
なにかが歪んでいる世界.
それは違和感を感じさせるものではなく,
むしろ私の心には親近感を感じさせる.
それが私のとっても真実の世界なのではないかと思わせる.

こうして挙げていくとキリがない.
しかし,ひとつひとつの作品は確かに私の心に
なにかを残した.
たぶんその多くの作品は忘れてしまうのだけれど,
なにかを感じたという記憶は残り,
それはまたいつか発火して蘇る.
それこそが芸術であることの意味なのだろう.

現代芸術は,誰かがいうように
もう行き詰まり,閉塞感に悩まされているわけではない.
なにかがまたその限界を越え始めているような気がする.
それをまた観に行きたいと思わせる.
そんな展示であった.

#4月4日まで開催.もう少しで終わってしまう...

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写真は,国際国立美術館と大阪市立科学館.
国際国立美術館はシーザー・ペリの建築.

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