今年の目標の一つは,50冊本を読むことなのだけれど,既に今年に入って3冊を読んでしまった.いや,もっとゆっくり読むはずだったのだけれど,「読んでしまった」という感じなのである.
読んだ本は,
恩田陸「蛇行する川のほとり」1~3巻
である.3巻というと相当な分量を思い浮かべる方もいるかと思うけれど,その実一冊あたり122~123ページで(作者の意図で各巻ほとんど同じページ数になっている),一冊あたり1時間ほどで読み終えてしまう程度なのである.
内容は作者が少女漫画を目指したという通り,女子高生という多感な時期,すなわち少女から大人になる特別な季節に起こった悲劇の話である.それも過去に起こった殺人事件が起因しているというミステリーとなっている.
しかし,ミステリーといっても,主題は少女たちの成長物語で,少女たちが持つ(あるいは持つであろうと期待する)特別な世界で交わされる好意と悪意について話が進められていくのである.思い浮かべる光景は,萩尾望都の世界.ふわふわ,キラキラの世界の中で残酷なまでに事件が起こっていく.そのせつなさが,描かれた理想的な少女世界と対比されて,心のなかにずっとあとを引くものになっている.
6人の少年少女たちが,親が不在のひとりの少女の家に泊まりこんで,演劇で使う「背景画」を夏休みの期間に描き上げる作業に取り組むのだけれど,各巻はそれぞれ別の登場人物の視点から語られていく.それぞれの成長が描かれ,そして殺人事件についてもそれぞれにとっての真実が語られていく.彼らが背景画を書いている演劇は,「藪の中」を題材にしたものとされていて,それがこの物語を示唆しているものとなっている.
とはいえ,人がうらやむ美男美女が6人でキラキラと夏の日差しを浴びながら緑の庭で紅茶を楽しんだりするのだから,そうした夢のような美しい世界が好きな人にはぜひオススメの物語である.ずいぶんと青春が遠くなってしまった私が読んでも,心の奥に少しだけ忘れたものを思い出したようにキラキラとするものがあった(告白するのは恥ずかしいが).
実はこの本は,恋愛小説なのか,SFなのか,はたまたミステリーなのか全く前知識なしに読み始めた.そのため話の展開がどうなるのか読めないまま,物語の最後の場面まで引っ張られていってしまったという感じであった.そんな感覚ははじめてのことであったけれど,そのワクワク感を十分に楽しむことができた.初めて読む作家の作品というのは,こうした体験ができるのがうれしい.
2013年1月9日水曜日
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