年末,合氣道の稽古の際に藤平光一先生のお話がでて,藤平先生は自分が天地に守られていることを確信されていたということが話題になった.天命を信じその道を歩んでいる限り,天地が自分を守ってくれないはずがないと思われていたのだろう.それがあの先生の絶対的な強さの秘密のひとつだったのだろうとのお話だった.
この話を聞いて,私は「本願」ということを思い出した.父の死後,浄土真宗のお寺にお世話になったこともあり,浄土真宗の教えに触れる機会があったのだが,阿弥陀様の本願によって,我々は救われることになっているのだという.それを信じていれば,極楽浄土にいけるのだ.
「救われる」ということは「悟る」ということである.悟ってしまえば,その人は時空を越えてしまう.すなわちもしも未来に私たちが本願によって救われるのであれば,現在の私たちも時空を越えて救われてしまうはずなのである.だから現在から幸せなのだ.
考えてみるとこの「本願」とは,過去の因果によって現在が決定されるのではなく,未来において現在が決定されるという,たいへんなコンセプトの転換のような気がする.もしも未来に私たちが救われる・悟るのであれば,現在の状況はそのための試練であり,その試練そのものを幸せに転化することができるのである.「本願成就」の確信こそが現在の幸せを決め,そうした考え方が現在の行動を決定していく.これこそが「他力本願」で救われるということではないだろうか.
(さらにいえば,現在の私たちも「悟る」ことができるということであり,「即身成仏」という考え方に発展していくのではないだろうか)
絶対の自信のもとにおける行動は,周囲の人も巻き込んでいく(人間はやはり社会的な存在であり,人との関係性においてアイデンティティが成り立っている.したがって,他人の影響をたいへん大きく受けやすいということを常々痛感している).それが藤平先生の魅力であり,宗教者の強さになっているのではないかと思ったのである.
まぁ,ひとつ間違うとカルトの教祖となる可能性もあるわけで,その辺は巻き込まれることに気をつけなければならないと思うけれど,毎日を幸せに生きていくためのヒントがこうしたところにあるのではないかとも思うのである.
#親鸞という人はかなり過激思想の持ち主だったらしい.「浄土に行きたいと思えないのですが」,と尋ねた弟子の唯円に対して,「私もそうだ」と答えていたりもする.なかなか興味深い人物なのである.
2013年1月10日木曜日
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