とんかつを胃が受け付けなくなってきたという話をした。 しかし,単に身体が受け付けなくなっただけであり,相変わらずとんかつが大好きなことには変わりがない。
とんかつ屋のカウンター。アツアツの揚げたてのとんかつが皿に盛られてやってくる。さて,あなたはどこから食べるだろうか?もしもとんかつが普通の盛り付け方であったのであれば,私は左から3番目の一切れから食べる。なぜならば一番大きく,そしてそれがロースとんかつであるならば,脂身がちょうど割合よく含まれている部位だからである。アツアツの熱で豚肉の脂が溶けていて,そのジューシー感を味わうことができるはずである。
とんかつの脂の甘さを味わうために,塩を振って食べる。とんかつが冷えていく前の一番熱い時に,最も脂ののっている箇所を食べる。これが最高だと思っている。
一方,ラーメンはどうだろうか。私は,ラーメンが運ばれてきたら,スープよりも麵の上に乗っている魅力的な数々の具よりも,まず麺をスープの中から引き出して食べる。たぶん店主は一番麺が美味しい瞬間を見計らってその一杯を出しているはずである。だからこそ,その一番美味しい瞬間の麺を味わうのが店主に対する礼儀なのだと思っている(ウソ。そんなたいそうなことは思っていない。でも麺が一番美味しい瞬間を考えて店主は一杯を運んでくるに違いないとは思っている)。スープを愛でるのはその次である。なんたってラーメンは麺を食べるのだから,麺ファーストで順番を考えたい。
他にも順番を考える食べ物があるだろうかと考えてみて,ひとつ思いついた。マクドナルドのバーガーセットである。マックのセットにおいては,まず最初に食べるのはフライドポテトである。アツアツでなければ,あのカリカリ感とホクホク感を味わえない。トレイの上に受け取ったらすぐにポテトを食べる。あるいはドライブスルーで受け取ったらすぐに袋をあけて,ポテトを手にとって食べる。セットではポテトをいかに美味しく食べるかがキモである。そう,マックのフライドポテトこそ,その美味しさが時間とともに(温度とともに)指数関数的に減少していく食べ物なのである。