私の手は指が短く,長らくぷよぷよしていてまるで子供のようで,それが私のお気に入りだった。だから手の甲もぼっちゃりしていて,すじばったところはほとんどなかった。子供のような手だとは他の人からもよくからかわれていたものである。私はそのたびに,「いいとこの生まれで,銀の箸より重たいものを持ったことがないんです」と答えていた。
しかし,60歳が近づいてきた今,とうとう手の甲に血管とスジが浮き出るようになってきた。気づいたのはこの数年。たぶん手の甲の脂肪分が落ちてしまってきたのだろう。つまりは老化の兆候である。
男性でも女性でも,老いが隠せない身体の部分というものがある。私はそれが「手の甲」と「首筋」だと思っている。女性がどんなに化粧をして着飾っていても,デコルテの首から鎖骨へのスジは隠せない。やはり脂肪分が落ちてくるのだろう。
手の甲もそうだ。私のようにどんなに力仕事をしなくとも,手の甲もやがて骨と血管が目立つようになり,「おじいさんの手」になっていく。私の手もとうとうその段階を迎えつつある。
もうため息しか出ない。身体のどの部分をみても「おじいさんの身体」に近づいている。人類が太古より「不老の薬」を追い求めるのもよくわかる。
「わがみよにふるながめせしまに」
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