業界用語というものがある.
それがいつの間にか広がって,
一般認識のもと使用されるようになった言葉も多い.
たとえば,「トリ」という言葉.
これは落語で最後に現れる芸人を言っていたものが,
いつのまにか最後を締めくくる人全般に
用いられるようになった.
あるいは,「ドタキャン」.
これも今では日常的に使用されている.
一方,理工学系の学会で良く用いられる
業界用語もある.
例えば「サチる」
これは,飽和する,増加率が減少する,
ということを意味する.
saturateを日本語っぽくいうところから
きている(と思う).
結構,よく耳にする.
また,「ネグる」
これは式の展開などにおいて,
ある項を省略するときなどに使う.
neglectする,を略したのだと思われる.
こちらもときどき耳にする.
なぜか,「オミットる」などとは言わない.
こうした言葉遣いは,
その業界から離れた人にとっては
奇異に感じる.
私も初めて学会に参加したときのことを思い出す.
大学4年生の冬,確か雪深い長岡技術科学大学で開催された
プラズマ・核融合学会だったと思う.
風邪を引き引き,それでも,なんとか自分の発表を終え,
他の講演を聴く余裕も出てきたときに,
いきなりこうした特殊用語のオンパレードに
面食らったのだ.
「ここでプラズマはリジッドに移動するものとし,
フラックスもフリーズされているとの仮定のもとですと,
この項はネグることができ...」
もうちんぷんかんぷん.
指導教官であるS先生に,
「日本語を使って欲しいです」などと
苦情を言っていたことを今でも覚えている.
一般的にこうした用語を用いるのは,
あまり品性よろしくない.
使うのを避けるべきである.
研究者たるもの,
できるだけ正確な表現を心がけるべきだ.
(ときどき「50%」を「ゴジュッパー」などと
発音しているひとがいるが,
これはちょっといただけない)
しかし,「サチる」という言葉を
「増加率がここで減少する」などと
正確に表現しようとすると,
実は違和感を感じてしまうのも事実なのである.
「サチる」というのは良く言ったもので,
それほど物理現象にぴったりなのである.
私が学会でこの言葉を使用することはないだろうが,
他人が使用してるのを聞いても
別に違和感を感じない.
いつか一般に浸透したら
使用してもいいかもしれないとも思う.
しかし,「サチる」,「ネグる」は
一般化しないのだろうなぁ.
こうしたことを考えてみると,
和洋に関わらず,次々と新しい言葉が生まれてくる
この日本語というものの可能性の大きさを
思わずにはいられない.
2007年11月22日木曜日
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