2010年1月12日火曜日

モータが小型化すると...

今朝は,「電気機器」の講義で誘導機について話した.
最近は永久磁石を用いた同期電動機も増えてきているが,
まだまだ誘導電動機が多くを占めているので,
その内容を理解しておくことは大変重要である.
また日本の発電電力の約50%は電動機で消費されている
というから,その特性の理解は電力供給側にとっても
必要不可欠と言えるだろう.

しかし,近年,永久磁石を用いた同期電動機(PMSM)の用途が,
高磁束密度の磁石の開発や
パワーエレクトロニクス技術の発展とともに広がってきており,
今後ますます重要になっていくことは間違いない.
こちらもしっかりと理解しておかなければなるまい.

たとえばハイブリッド自動車への応用が思い浮かぶ.
以前は誘導機を使うメーカもあったけれど,
最近はやはりPMSMが多い.
(アメリカのテスラ・モーターズは未だ誘導機らしいけれど)
それは,初期トルクが大きいこと,出力密度が高くなること,
損失が少ないことなどのいくつかの特長があるからである.
しかし,結局のところ,PMSMを用いれば小型化が実現できると
いうところにメリットは集約されるのだ.

この小型化というところが大事で,
たとえばエレベータなどは,その恩恵を受けて
ずいぶんとデザインが変わっている.

以前は,マンションなどのエレベータといえば,
屋上にエレベータのための機械室があって,
屋上はフラットではなく,立方体の部屋が飛び出す構造が
多かったけれど,現在ではエレベータ用のモータ自体の大きさが
厚さ数十センチにも小型化されたため,エレベーターのカゴと
壁の間に設置されるようになり,屋上の機械室が不要となった.
だから最近のマンションでは屋上に
突起物のないデザインが増えてきている.
(デザイナーに受けがいいらしい)

あるいは,最近鉄道の駅のバリアフリー化の一環として,
ホームへのエレベータがよく設置されるようになってきている.
以前からそんなエレベータなど早く取り付ければ
良かったではないかと思ってしまうけれど,
あとづけで取り付けようとすると,
なかなかそのスペースが確保できなかったらしい.
そこで,やはりモータの小型化が進んだ結果,ホームの真ん中に
出入口を設けたエレベータの設置が可能になってきたのである.

小型化したモータがどれだけ新しい市場を創造するか,
こうした例を考えれば,今後の技術動向にも注目すべきことは
明らかである.
最新の新幹線では,誘導機の代わりにPMSMを使っているというのだから,
技術はどんどんと進展していることを実感する.
一昔前は不可能だったことが,今では可能となっている.
その辺の面白さに,私たちの研究のやりがいがあるのだろう.

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