村上春樹の新作「街とその不確かな壁」が出版されたということで,出版業界としてひさびさのヒット作になるかどうかが注目されている。長編としては「騎士団長殺し」以来だろう。
こうみえて私は村上春樹の作品は好きだったので,たぶんすべての長編は読んでいると思うのだけれど,ワタシ的には「海辺のカフカ」を頂点として,だんだんその魅力が薄れている印象だから,本作ではぜひ面白さを復活して欲しいと思っている(あくまでもワタシ的に。1Q84は少しよかったのだけど...)。
さて,村上春樹といえば話法が特徴的だけど,今話題のAIなど使えば「村上春樹風」の文章を短時間に好きなだけ生成してくれるだろう。たぶん。たとえば僕がスパゲッティを茹でる間に。そしてやわらかな春の雪が地面にふりつもるように気づかない間に驚くほどの量を。君が考えるほど少なくない人数の人間が,私のこのブログも彼の影響を受けていると口をそろえていうに違いない。やれやれ。
ただ,村上春樹の独特な喩えについてはどうだろう。AIはうまく模写してくれるだろうか。たとえば,「広々としたフライパンに新しい油を敷いたときのような沈黙がしばらくそこにあった」とか,「私の頭は夜明けの鶏小屋のように混乱した」みたいな比喩を。こんな発想,AIには難しいのではないだろうか?意図なくランダムに語句を並べることはできるだろうけれど...
村上春樹の比喩は,ときに突飛で笑いの成分も多く含まれる。そんなことを考えていたら,これは俗にいう「お笑いの喩えツッコミ」にとても近いのではないかと思いついた。ダウンタウンの松本人志とか,フットボールアワーの後藤輝基とか,本当にうまいなと思うのだけれど,そうした変な喩えと村上春樹の喩えには共通点があるのではないだろうか。たとえば全く異なる例にたとえて,「そんなんXXXXくらいXXXXやんか」(良い例が思いつかなくてすみません)というツッコミで笑わせるところなんて,ハルキミ(春樹味)を感じさせる。
私が好きなお笑いの人のひとりが最近快進撃している麒麟の川島明である。「ラヴィット!」とか大好きなのだけれど,彼の比喩の瞬発力も秀逸である。IPPONグランプリを観ていても,「おもしろさ」と「感心」が共存している回答が多くて,彼の才能の素晴らしさに感嘆している。そして彼の「喩えツッコミ」も素晴らしいのだ。
こう考えると,村上春樹も瞬発力さえあればお笑いもイケるのではないか,なんて思ってしまうけれど,それはやはり妄想でしかない。彼の新作を読むのはいつのことになるかわからないけれど,今度は作品の中に出てくる比喩を数えながら読んでみたい。ただ,彼も年齢を重ねるにつれて,変な比喩は減っているように感じられるけど。。。
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