現在の私は投げることはできないけれど,私はスープレックスが大好きである。
スープレックスとは,プロレスの神様,カール・ゴッチの定義によれば「後ろから相手の胴をクラッチして反り投げてブリッジで固めるもの」(Wikipediaからの引用)とのことであり,ジャーマンスープレックスホールドの派生技をいうらしい。
なので定義通りにいえば,ホールドを不要とする私の投げは「スープレックス」ではなく,単なる「サルト」であるらしい。そのうえクラッチするのは相手の後ろからとは限らないから,それもスープレックスの定義から外れている。しかし,多くの日本人が間違って呼ぶように,柔道でいうところの裏投げ風の投げ技をここではスープレックスと呼ぶことにしたい。
昔は私もスープレックスのために,ブリッジを稽古し,首ブリッジなどして首を鍛えたりしていた。しかし,投げるだけならばジャーマンスープレックスホールドのように首で支える必要もないので,スープレックスのために首を鍛えるのをやめた。ブリッジもずいぶん背筋力が落ち,身体を反る柔軟性もなくなってしまったので,現在はまともにできなくなってしまった。そう,現在の私にはもうスープレックスを投げる体力がない。
しかし,それでもスープレックスが大好きなのは,それが一投必殺の技だからなのである。相手の胴,あるいは腕ごと身体をクラッチして,受け身が取れない状態で後ろに反り投げをする。コンクリートの地面にたたきつけることになるストリートではもちろん危険極まりない技となる。ここでは自分はブリッジすることなく,自分の身体を相手をクッションにして守る。それが私のスープレックスなのである。
私が遣えたスープレックスは3種類(ちなみに前田日明は12種類と言われていた)。
まずバックドロップ。バックドロップは私の定義で言えばスープレックスで「ベリー・トゥ・バック」のサルトにあたるわけだが,柔道の基本的な裏投げでもある。有名な格言のとおり,「バックドロップはヘソで投げる」のである(ベリー・トゥ・バック)。バックドロップには多くの名手がいるけれど,私が好きなのはジャンボ鶴田のバックドロップ。鶴田が本気で投げたら,相手はすぐに失神してしまうのではないかと思わせる完成度である。もちろんプロレスの試合ではそれなりの気遣いをしているのだろうけれど。
次は,変形のフロントスープレックス。本来,フロントスープレックスは「ベリー・トゥ・ベリー」(ヘソとヘソをあわせる)で投げるわけなのだけれど,これは非常に背筋力を必要とする。プロレスラーだけでなくアマレスの選手が「ベリー・トゥ・ベリー」で投げるのを見るとゾッとするほど危険な技である。当然,私にはそんな風に投げることができないのだけれど,変形として相手の斜めの角度に入るのを得意としていた。
最後は,キャプチュード。前田日明のオリジナル技らしい。しかし,相手の片膝を抱えて投げるのは,空手の「バッサイ大」の分解の変形になるのではないかと私は思っている。バッサイでは,後方に投げないけれど...蹴りのサバキからの投げ技は古来存在している。
ということで,スープレックスを再び遣えるようになるまで体力を元通りにしたいというのが今年の目標である。現状,スクワット10回がつらいのだけど...
#こう考えると,レスラーや柔道家はいかに危険な技を遣えるのか,ということに思い至り,恐怖する