2010年4月1日木曜日

電力の産地指定購入

4月1日である.
新しい年度の始まり.
大学が本格的に始動するには,
まだ数日あるけれど(来週が始業式),
私も平成22年度用にバージョンアップである.
4月1日には,毎年決めて行うことがある.
(といっても,PCのバックアップをとるくらいだが)

今年度の業界の展望としては,
やはりスマートグリッドがキーとなるだろう.
タイトルに「スマートグリッド」とつけば,
シンポジウム,講習会ともに,
大盛況の客の入りとなっている.
基本的には,パワーエレクトロニクス分野にとって
追い風であるので,それはそれで良いのだけれど.

さて,スマートグリッドとは,定義が様々あって
なんとも一言では表すのは難しいのだけれど,
情報通信技術(ICT)を用いて送配電系統において
電力を効率良く運用するシステムであるとは
とりあえず言えるだろう.

たとえば,スマートメータはその代表的なガジェットの
ひとつである.
系統の発電状況を見ながら,家庭内・ビル内の
電力使用量を制御する.
アメリカでは,リアルタイムで電力が足りない時は
電力料金が上がり,余っているときは下がるので,
そうすることによって,需要家は安価な電力を使用でき,
供給者も電力のピークを抑えることができて,
皆が利益を得ることができる.
こうしたICTを活用した電力制御の技術が,
ますます研究・開発されていくことが予想される.

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私が最近聞いた話では,電力の産地指定買いが可能となる
技術が開発されたという.
これは,電子データにおける「電子透かし」のように
電力が搬送される正弦波に,信号波を重畳して,
発電情報を電力と共に送るのだという.

需要家が受け取る電力情報としては,
その電力がどこで,どのように発電されたか,
などが含まれる.
すなわち,大阪で受電した電力が,福井敦賀原発で
発電されたものなのか,青山高原の風力発電施設で
発電されたものなのかが明らかになるというのである.
(実際には,何%含まれているか,ということになるが)

これは将来,太陽光・風力発電施設で発電された電力は
一般的に品質が悪いが,CO2削減に大きく貢献できるので,
その分の電力は安価に購入でき,火力によるものは
少し価格が高くなる,というような課金が
需要家ごとに可能となる.
あるいは,原発反対派の家庭では原発で発電された電力を
購入しないことが可能となる.
そんな柔軟な課金体系を可能とするのである.

それを実現するための
ICT,電力制御技術もほぼ揃いつつある.

問題は情報をどのように送るかということなのだが,
これは電力線搬送通信(PLC)を用いることが想定されている.
数年前に,高速PLCの使用が家庭内,ビル内で解禁されたが,
これを用いることによって,新たな通信線を設けなくても
情報をやり取りすることができるのである.
ただし,高速PLCを通常の電線に使用することは現在できない.
これは,航空機通信や天文学の観測にノイズとして影響を
与えるためである.

しかし,これも超伝導送電が可能となれば解決される.
超伝導ケーブルはケーブル外側にシースを設けており,
電磁波の漏洩がほとんど無いからである.

ということで,ちょっと先の技術ではあるが,
将来は,電力の産地を指定して購入する時代が来るのだと思う.
電力供給者の顔が見える,電力自由市場.
そんな未来はもう近いのである.

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