新しい年度の始まり.
大学が本格的に始動するには,
まだ数日あるけれど(来週が始業式),
私も平成22年度用にバージョンアップである.
4月1日には,毎年決めて行うことがある.
(といっても,PCのバックアップをとるくらいだが)
今年度の業界の展望としては,
やはりスマートグリッドがキーとなるだろう.
タイトルに「スマートグリッド」とつけば,
シンポジウム,講習会ともに,
大盛況の客の入りとなっている.
基本的には,パワーエレクトロニクス分野にとって
追い風であるので,それはそれで良いのだけれど.
さて,スマートグリッドとは,定義が様々あって
なんとも一言では表すのは難しいのだけれど,
情報通信技術(ICT)を用いて送配電系統において
電力を効率良く運用するシステムであるとは
とりあえず言えるだろう.
たとえば,スマートメータはその代表的なガジェットの
ひとつである.
系統の発電状況を見ながら,家庭内・ビル内の
電力使用量を制御する.
アメリカでは,リアルタイムで電力が足りない時は
電力料金が上がり,余っているときは下がるので,
そうすることによって,需要家は安価な電力を使用でき,
供給者も電力のピークを抑えることができて,
皆が利益を得ることができる.
こうしたICTを活用した電力制御の技術が,
ますます研究・開発されていくことが予想される.
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私が最近聞いた話では,電力の産地指定買いが可能となる
技術が開発されたという.
これは,電子データにおける「電子透かし」のように
電力が搬送される正弦波に,信号波を重畳して,
発電情報を電力と共に送るのだという.
需要家が受け取る電力情報としては,
その電力がどこで,どのように発電されたか,
などが含まれる.
すなわち,大阪で受電した電力が,福井敦賀原発で
発電されたものなのか,青山高原の風力発電施設で
発電されたものなのかが明らかになるというのである.
(実際には,何%含まれているか,ということになるが)
これは将来,太陽光・風力発電施設で発電された電力は
一般的に品質が悪いが,CO2削減に大きく貢献できるので,
その分の電力は安価に購入でき,火力によるものは
少し価格が高くなる,というような課金が
需要家ごとに可能となる.
あるいは,原発反対派の家庭では原発で発電された電力を
購入しないことが可能となる.
そんな柔軟な課金体系を可能とするのである.
それを実現するための
ICT,電力制御技術もほぼ揃いつつある.
問題は情報をどのように送るかということなのだが,
これは電力線搬送通信(PLC)を用いることが想定されている.
数年前に,高速PLCの使用が家庭内,ビル内で解禁されたが,
これを用いることによって,新たな通信線を設けなくても
情報をやり取りすることができるのである.
ただし,高速PLCを通常の電線に使用することは現在できない.
これは,航空機通信や天文学の観測にノイズとして影響を
与えるためである.
しかし,これも超伝導送電が可能となれば解決される.
超伝導ケーブルはケーブル外側にシースを設けており,
電磁波の漏洩がほとんど無いからである.
ということで,ちょっと先の技術ではあるが,
将来は,電力の産地を指定して購入する時代が来るのだと思う.
電力供給者の顔が見える,電力自由市場.
そんな未来はもう近いのである.
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