咲き始めている.
4月が来たことを実感する.
あともう少し暖かくなれば完璧である.
しかし,つくづく日本人は桜が好きなのだと思う.
小林秀雄の講演集にも,桜の話がいくつか出てくる.
ひとつは本居宣長.
敷島の大和心を人とはば 朝日ににほふ山桜花
という歌を挙げて,彼が山桜を自分の墓所に
植えて欲しいと願うまでに愛していたことを話している.
(また「大和心」とは何かということに触れていて,
大変興味深い講演となっている)
その他にも,桜の植林に一生を捧げ,
親から引き継いだ財産をすべて使ってしまった人の話が
紹介されていて,その美しさは誰かの人生をも
狂わせてしまうほどなのだと思わされる.
なぜこれほどまでに桜は美しいのか.
梶井基次郎は,「櫻の樹の下には」という文章で冒頭,
こう述べている.
櫻の樹の下には屍体が埋まっている!
そうでなければ,あんなに美しく咲くわけがないじゃないか,
と述べて,これは信じてもいいことだ,と言っている.
それほどまでに怪しく美しいのだ.桜は.
夜桜を見た.
花びらがひらひらと白く,月の光の中散っていく.
その情景になにもいうことはなかった.
ただただ美しいというだけで十分である.
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