2011年5月26日木曜日

電力需給バランスが崩れるとなぜ周波数が変化するのか

本ブログのコメントに,

(電力)供給過多になるとなぜ、発電機の回転数が上がるのか

というご質問をいただいたので,
それについての回答を少し.
(すみません,コメントいただいていたのに
気づくのが遅れました)

発電機の回転数は,個々の発電ユニットで見れば,
発電機に入力される機械的入力と,
発電機から系統側に出力される電気的出力の
バランスによって決まります.

ここでいう「発電ユニット」とは,
電気機械である「発電機」と動力を発生する「原動機」とが
組み合わされたものを指すものとします.
たとえば,火力発電ユニットであれば,
タービンが原動機,同期発電機が発電機となり,
水力発電ユニットであれば,水車が原動機となります.

個々の発電機の回転数は,このタービンや水車から
発電機に伝えられる軸入力の大きさ(機械的入力)と
系統側に送られる電力(電気的出力)のバランスによって決まります.

すなわち,

(機械的入力)=(電気的出力)

の関係があるときは,回転数は変わりません.

もしも,電力供給過多の状況が生じたとします.
一基あたりに課せられる出力電力は,
相対的に小さくなります.
その結果,

(機械的入力) > (電気的出力)

ということになり,回転数は増加します.
すなわち系統全体では周波数が上昇します.

この状況はちょうど,自転車に乗っているときに
似ています.
平地を走っているときは,一定ペースで
ペダルをこぎ続けているときが,
入出力のバランスがとれている状態です.

次に,下り坂にさしかかったとします.
ペダルを漕ぐペースは速まりますよね.
これと同じです.
発電機の回転数が増加するわけです.

一方逆に,上り坂にきた状態が

(機械的入力) < (電気的出力)

の関係に相当します.
当然ペダルを漕ぐペースは遅くなります.
つまり,発電機の回転数は減少するわけです.

しかし,このように自転車で下り坂や上り坂に
さしかかった際には,私たちは当然
ペダルを漕ぐ力を増減して,ペースを調整します.
それと同じことを,原動機を制御して行おうとするわけです.
つまり,回転数が上がってきたら,原動機出力
(機械的入力)を下げ,逆に下がってきたら,
原動機出力を上げようとします.
この速度調整を行うものを調速機(ガバナ)と呼んでいます.
水車だったら,水量を調節し,
タービンだったら,蒸気量を調節する異なります.
ただし,この応答速度を超えるような電力需要の変化が
起こるようなことがあると,あるいは,その出力調整
範囲を超えるようなことなどがあると,
発電機の回転数が規定の50Hzや60Hzより,
ずれてしまうことになります.

実際には,発電機は系統に連系されており,
その系統の周波数に従って運転されています.
しかし,その系統の周波数ももとをたどれば,
複数の発電機が決めているのです.
系統全体でみても,結局,入力と出力の関係が成り立ち,
周波数はそのバランスで決定されることになります.

ということで,電力が供給過多になれば,
周波数は上昇し,不足すれば下降してしまい,
最終的には,そうした周波数に同期できない発電機から
解列される(系統から切り離される)ことになり,
停電につながる恐れがあるわけです.

実際のところ,もっと複雑な周波数制御が
行われていたり,ガバナ任せだけではない
出力調整が行われていたりしていますが,
だいたいの理由はこんな感じです.

電力会社の役割はこの電力需給のバランスを調整して,
周波数と電圧を調整することにあります.

8 件のコメント:

  1. 電力使用制限令実施にあたり、「電力供給が不足するとなぜ周波数が低くなるか?」との疑問を調べているところでした。
    非常にわかりやすい記載で容易に理解できました。

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  2. 電力需給の変化と周波数の変化の関係を自転車にたとえてご説明いただいておりますが、もう一つストンと理解できません。自転車の速度は物理的な力学の世界ですが、それがどうして周波数という電子工学の説明につながるのかと言うことがわかりません。すみませんが、電子工学を全く知らない私でもわかるように、もう一度説明をしていただけませんでしょうか。よろしくお願いします。

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  3. 通りすがり2011年10月3日 16:37

    momoさんへ
    ブログ主様と無関係な私ですが、しかも2ヶ月前の質問ですが回答したいと思います。
    結論から言うと発電された電力が消費されると発電機の回転にブレーキが掛かるような現象が生じるのです。
    自転車に乗っていて暗くなってライトを点けたらペダルが少し重くなった経験はありませんか?
    あれはライト用の発電機にてライトで使った分だけブレーキが掛かったためです。
    発電機は魔法の永久機関ではないので、出た分が入っていかないと帳尻あわせが勝手に発生します。それが回転へのブレーキ(回転数の低下)です。蛇足:その現象を電車などで活用したのが回生ブレーキというものです。
    私は専門家ではないのでかなり大雑把かつ細部が不正確な回答ですが、理解の助けになれば、と思います。

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  4. こんな問題は予測できたことで、なんで需給と周波数が影響しちゃうシステムを組んだのか?  例えば、直流で発電し、これを交流返還するなら、需給と周波数は無関係。
    直流の方が「貸し借り」も簡単では? 現状ではもっと需給と周波数変化の対応改善を
    考えないと。 入力は水力でも(ゲリラあり、渇水あり)、風力・水力でも自然エネルギー発電は自然次第! 「変化するもの」が大前提。  これを解決しないと、いつまでも「自然発電」は誰もやらない。 まして、「太陽光発電」が本格化して、
    電力会社は「そこからの買電費がかかる」とのりゆうで電気料金値上げするなど、言語道断。 こんな”詐欺行為”を堂々とやられているのに、なんで日本人は黙っている???

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    1. 大規模蓄電システムが系統に連携すれば再生可能エネルギーの導入はもっと進みますよ

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  5. 電流は抵抗があると消費されて電力ロスになる、長い送電線に電気を通そうとすると
    電力ロスも膨大になるだからそれを避けるために交流方式にした。・・・と習ったような覚えがあるけど直流にすると、送電線にかかる電圧分ロスになる・・・んじゃなかったっけ
    うろ覚えだけど、ちなみにこれを考え出した人は、ええと、確かエジソンとか言わなかったっけ、これもうろ覚え。

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  6. 原動機出力と発電機負荷のバランスで周波数が変化することは感覚的には理解できますが、交流電力はVIcosθ(θは電圧Vと電流Iの位相差)なので見かけ上、周波数が直接出てきません。周波数が変化するとインピーダンス(リアクトル)が変化し、位相差も変化する、あるいは送電抵抗が変化し、出力と負荷がバランスするという理解でよいのでしょうか。

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  7. 上記の質問の補足です。実際には、発電機出力と負荷のバランスが崩れ場合、発電機保護や深川の設備の変調を防止するため、何らかの保護措置が取られますが、それがないものとすると、系統の周波数が変動した状態で静定(バランス)することになるのでしょうか。その場合には、という前提です。

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