というニュースを聞いて,
村上春樹の小説を思い出したのは
私だけではないだろう.
村上春樹の新しい小説「1Q84」が
すごいことになっていて,
世間はその話題で持ち切りだけど,
残念ながら,その小説の話ではない.
「海辺のカフカ」では,
空から魚やヒルが降ってくるという
エピソードが出てくる.
彼の小説らしく,それがなぜ起こるのか,
どんな意味があるのか,などには
ほとんど言及されないのだけれど,
不気味な予兆としては効果十分である.
イノセントなナカタさんというお爺さんの
キャラクタとあいまって,
非常に印象的なシーンになっている.
現実にも,空から魚が降ってくるという話は,
世界ではいくつかあるようだけど,
今回は竜巻が起こるような天候ではなかったらしいし,
降ってきたのがオタマジャクシだけ,というのも
ずいぶん不思議だ.
科学的にはなかなか説明が難しいのだろう.
(科学的な仮説を立てるには証拠が必要となるから)
昔の人だったら,これは妖怪のしわざとして
片付けるに違いない.
天狗とか河童とか.
あるいは天変地異の予兆であると
人々はおそれおののくのかもしれない.
(ほんとにそうかもしれないけど)
科学が無かった時代には,
説明がつかないことに説明をつけるためには,
妖怪が必要だったのである.
説明がつかないことをそのままでおいておくことは,
いまも昔も,人はできないことらしい.
なにかしら説明がないと,
人々はすっきりできないのである.
健全な精神のためには物語が必要なのである.
その物語を語る役割をするのが
現代では科学であり,昔では妖怪であった.
それに付加される物語はずいぶんと変わったけれど,
説明・理由づけを求める人間の特性は
変わらないままなのだなと思う.
一方,説明がつかない物事からは
人は離れることができなくなる.
ずっとペンディングの状態である.
こうやって人々の関心を惹き続けているのが,
謎を謎のまま残している村上春樹の小説ではないかと思う.
彼の小説には,推理小説のように
トリックが明かされることを期待できない.
複雑な世界,理由がつかない現象,
そうしたものをある程度の諦念を抱きながら,
そのまま引き受けていかなければならないということ.
それが彼の小説のひとつの特徴であり,
魅力であるのだ.
謎は謎のままに.
それが彼の人気の秘密のひとつだと思う.
#余談で...
ちなみに「1Q84」は当分読む予定はない.
文庫本になるまで待とうかなと思っている.
重たい本は持ち歩いて読む暇がないので,
風呂の中でゆっくり読める文庫本として
出版されるまで,あと3年くらい待とう.
まぁ,こうして話題になると
アマノジャクの私は意地でも読まないのだけど.
ノルウェイの森なんて読んだのは,
2年前くらいだし.
あぁ,でも中身が気になる.
3年後には,ほとんど中身を
知ってしまっているのだろうなぁ(ため息).
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