二つの大きなのポップがあった.
ひとつは,先日バン・クライバーン国際ピアノコンクールで
優勝した辻井伸行さんのCDのもの.
そして,もうひとつはヤナーチェクのシンフォニエッタの
ものだった.
一つ目はわかる.
これまでも誰かがピアノコンクールで優勝すれば,
そのCDは注目されてきた.
例えばショパンコンクールのブーニンとかユンディ・リとか.
(古い人はその時代を知らないので,ここにはあげない)
チャイコフスキーコンクールだったら,上原彩子とか
諏訪内晶子とか(バイオリンだけど).
辻井さんの注目度は,いろいろあってそれ以上に高く,
CDも大変売れているらしいけれど...
しかし,二つ目は意味がはじめ良くわからなくて,
ポップを読んで初めて知ったのだけれど,
村上春樹の小説「1Q84」の中において,
ジョージ・セル指揮クリーブランド管弦楽団
ヤナーチェクの「シンフォニエッタ」が出てくるらしく,
それでCDの売れ行きが伸びているのだとか.
「やれやれ」と,どこかの小説の主人公でなくても
言いたくなってしまう.
それほど「1Q84」は人気なのか.
正直,私もヤナーチェクのシンフォニエッタの録音は
所有していない.
一応,何度か聞いたことがあるけれど,
最初の金管のファンファーレ(それもメロディー忘れた)と
最後の弦楽器の盛り上がりくらいがあったことしか覚えていない.
名作といわれているらしいけれど(レコ芸でも名曲にセレクト
されていたような気がする),
やっぱりマイナーである.
ヤナーチェク自体がマイナーだ.
私は,彼の二つの弦楽四重奏曲は大好きで,
東京カルテットやアルバン・ベルクカルテットの生の演奏にも
触れる機会があったのだけれど,
そういえば管弦楽というのは聴いたことがない.
オペラ「利口な女狐」などは内容も充実した名作で,
吉田秀和氏も絶賛しており,いつか観てみたいとは
思っているのだけれど...
(去年だったか小澤征爾,サイトウキネンで上演されたような
気がするけど,もちろん観に行けませんでした)
それがこれでメジャーになるのだろうか.
それはそれで一クラシックファンとしては,嬉しいのだけれど...
村上春樹氏の前作の長編小説「海辺のカフカ」でも
音楽が重要な役割を果たす.
そこでは,シューベルトのピアノソナタ17番がいい感じで
紹介されているのだけれど(その他にもプリンスなども出てくるけど),
私が心を惹かれたのは,ベートーベンのピアノトリオ「大公」である.
作品の中では,ホシノという一人の男性がこの曲を聴くことによって
人生を変えてしまうという,重要なきっかけとなっているのだ.
(大公トリオが売れたという話はあまり聞かなかったような気がするが)
音楽を聴くことによって人生が変わってしまうようなことが
本当にありうるのだろうか.
私は有り得るだろうと思っている.
往年のドイツのソプラノ歌手エリザベート・シュワルツコップは,
「リート(歌曲)を聴く前と聴いたあとでは,
その人の人生が変わるようなものでなければなりません」
と述べていたという(詳細うろ覚え).
それくらい重要なものでなければ,人はこんなに
音楽を愛すはずがないと思う.
それは間違いない.
ただ,私には,人生を変えるような音楽に出会う瞬間は
まだ訪れていないようだけれど.
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