2010年2月24日水曜日

電気学会関西支部講習会「スマートグリッド」

先週の金曜日は,中央電気倶楽部で開催された
電気学会関西支部主催の講習会に参加した.
テーマは「スマートグリッド」.

通常は,30~40名程度の参加者なのに,
当日はなんと170名.
急遽,会場も大ホールに変更されて,
講習会は非常に盛況であった.

「スマートグリッド」という言葉は
今,集客力抜群である.
「スマートグリッドに適用される電力変換器」
「スマートグリッドとスマートメータ」
「スマートグリッドとEMI」...など,
「スマートグリッド」という言葉さえつければ,
人が集まってくる.

「スマートグリッド」といえば,なにかビジネス
チャンスが転がっているように思えるのだろうか.

では「スマートグリッド」の定義とはなんなのだろうか.
実は,正式な定義はないようである.
また,日本やアメリカでの捉え方もずいぶんと異なっているようだ.

当日の講演では,「スマートグリッド」というのは
実態がなく,あくまでも予算獲得上の言葉である.
という話があった.
一時期の「ナノテク」と同じ部類のものなのだと.

確かに「スマートグリッド」の専門家というのは
見当たらないようである.
学問として成立していないのだ.
というよりも,いろいろな分野を横断する言葉であって,
一分野の専門家だけでは論ずることが出来ないものなのだろう.

しかし,それでもなにか定義をしようとするならば,
電力的に見ると,通信技術を活用して,既存電力設備および
導入される分散電源を効率的に運用しようとする技術で
あるらしいとは,ぼんやりといえるのではないだろうか.

通信技術というのがミソで,もうICTでは食べていけなくなった
アメリカの情報通信業界が,今度は家ひとつひとつにIPを
割り振ってビジネスをしよう,と乗り出したのが
「スマートグリッド」だという話もあるくらいである.
確かに「スマートグリッド」というのは,電力業界から出た話では
なさそうである.
有名になったのは,アメリカ,オバマ大統領の政策に
挙げられてからだけれども,そうした概念は電力分野では
ずっと以前からあって,「いまさら」という印象を持ったものである.
ただ,それが情報通信業界からのプッシュで表舞台に立った,
というのは,もっともらしい話ではある.

家々にIPを割り振るということで,話題になっている技術が
「スマートメータ」であり,これは電力の使用量等の情報を
リアルタイムで系統の制御系に送り,
より柔軟な使用を可能にする目的の装置である.
アメリカでは,電力需要と供給のバランスから電力の価格が
変動することもあるから(市場価格として決定される),
電力が高いときには自動的に電力の使用を控え,
安いときに自動的に洗濯機や食器洗い乾燥機などを
動作させるようにすれば,消費者は電気料金にメリットが生まれるし,
電力会社も,電力ピーク抑制においてメリットがある.
こうしてフレキシブルに電力の使用や融通を制御することによって
あらたなビジネスを生み出そうというのである.

しかし,当日の講演で関西電力の「新計量システム」の開発について
紹介があったが,日本ではすでにこうした多機能なメータについては
すでに開発が進められていて,現在すでに20万件を越える顧客に
設置されているのだという.
電気料金を決定するための家庭における使用電力量だけでなく,
将来は30分毎の電力,電圧,電流値などの情報も収集することで,
より効率的な電気の使用を顧客に提案することや,
電力品質の向上に資する情報を得ることができるという話だった.
また,すでに遠隔操作でブレーカをオン・オフできるようになっている.
ここらへんの事情から,日本の電力会社は,
アメリカでいうところのスマートグリッドの技術は既に開発済みで
いまさら騒ぐ必要が無い,とよく言っていることが理解される.

しかし,スマートグリッドが必要ないとは決して言っておらず,
将来,お天気任せで発電量が変動する太陽光発電や風力発電の
大量導入が進んだ場合に,それらが電力系統に悪影響を与えないための
技術としては,必要になるとの見解は一致しているようである.

いまさら,大騒ぎする必要はないけれど,
ひとつには将来の分散電源導入のため,
そして海外での市場を確保するためのスタンダードを日本が得るために,
スマートグリッドの研究開発は日本も行うべきである,とのことである.

なるほど.
やっぱり「スマートグリッド」には人が集まるわけなのである.

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