JALの航空機で火を噴いたやら,
新幹線のパンタグラフのネジが
締め忘れられていたやら,
工学的に印象の悪いニュースが続いた.
それに輪をかけてトヨタのリコールの話.
特に運輸関係は安全が第一だから,
こうした話は十分に世間を不安にさせる.
この原因はなにかと考えると,
やはり不況というのが悪影響を与えていると
私は思っている.
以前の職場でもそうだったけれど,
予算が削られていくと,まず人が少なくなっていく.
それを作業の効率化で補おうとしていくのだけれど
(たとえばマニュアルを整備して,熟練でない人でも
その作業を担当できるようにする),
現場に蔓延する焦燥感・余裕の無さ感は,
徐々に作業現場の雰囲気を侵食していくのである.
作業は効率化されても,KYと呼ばれる
危険予知の効率はそれに比例して
向上することはないのではないか.
もちろんマニュアルの安全チェック項目の充実,
現場でもKY活動(危険予知活動)の奨励などで,
それはずいぶんと向上されるだろう.
しかし,効率化された作業の仕事量の増加率は
それを上回ってしまうのがよくあることなのだ.
心理的にも,余裕がなくなると危険予知の感覚が
働かなくなる.
次はこれ,その次はこれ,と余裕なくギッチリと
詰め込まれた作業予定(その作業工程にはきっちりと
締め切り期限がある)を見て,
心の余裕を感じられる人はずいぶんと少ないだろう.
その一方で経費削減を迫られていると,
今回作業時間を10%削減できたら,次回からは
その90%の時間が作業時間として見積もられる.
どんどん現場の首がしまっていくワケである.
(まじめにやればやるほど悲惨な状況になる.
しかし,まじめにやらなければ仕事が来なくなる)
また仕事を強制されているという印象が強くなると,
仕事への集中力は確実に減少する.
余裕があれば,自分の工夫も加えられるし,
ある程度自発的に働いているという感覚が得られる.
この「強制的」と「自発的」は大きな違いを生むのである.
(特に,安全管理の面において)
人と金,そして時間のリソースの不足が
こうして事故を招いていく.
1つの重大な事故の背景には29の軽微な事故があり,
その背景には300の異常があるという
ハインリッヒの法則を例に出すまでもなく,
ヒヤリハット(ヒヤッとしたり,ハッとしたりする事象)は
日常的に増加しているのではないだろうか.
そうならないようにするのが管理者の役目なのだが,
いまの社会状況で余裕のある工程管理というのは
難しいのだろうなぁ.
人間というものはミスを犯す動物であることを前提に,
なにはともあれ余裕を確保すること,
そして作業者に自発的に仕事をしているという感覚を
維持させること.
この二つを,この厳しい状況下で実現させることを
企業は求められているのだ.
そうでなければ,まだこうした技術的な不祥事の問題は
続くに違いないのである.
2010年2月8日月曜日
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