2011年6月3日金曜日

1000万戸の太陽光発電導入計画に,ブルーになる

1000万戸の太陽光発電を導入するとの
菅首相の声明や最近の再生可能エネルギーを
原子力の代替にしようという話題の盛り上がりを見ていて,
かなりブルーになっている.

太陽光発電の1000万戸の導入を考えてみる.
これはぜひとも補助金なし,固定買取り制度無しで
実現していただきたいと心から思う.
そうでなければ,日本の電気料金がはねあがるか,
税金として徴収されるか,どちらかになるからである.

電気料金が上がれば,経済界は大打撃を受けることは
明白なのに,どうしてそれを声を大にして
マスコミはいわないのだろうか?

日本からメーカは逃げていくことになり,
(ただでさえ,法人税は高く,電気代ももともと高いのに)
雇用状況は悪化し,経済はますます不況になるだろう.
電気料金があがったところで,政府は
悪者になるのは電力会社だから,関係ないと思っているのだろう.
(現在もそういうところが多々あるし)

太陽光発電の全量買取りが実現しようとすれば,
一体どれだけのコストがかかるというのか?

現在,太陽光で発電された電力のうち,家庭で消費しきれない
余剰電力は電力系統に戻され(これを逆潮流という),
電力会社が1 kWあたり42円という,通常の電力料金の
約2倍の価格で各家庭から購入することになっている.
このように買取り価格を法的に決定して行う方法を
固定価格買取り制度(フィードインタリフ制度)と呼ぶ.

その費用はどこからでているのか?ということになるが,
もちろん,電力会社は赤字になるわけにはいかないから,
その分を,電力を使用している需要家全体で負担しているのである.
すなわち,太陽光発電を導入した家庭の電力料金を
われわれがシェアして負担しているのである.
当然,太陽光発電の導入量が高まれば,
電力料金への上乗せ額も増加する.
(太陽光発電装置購入時の補助金は政府から出ている?)

本来は,導入量に従って買取り価格を下げることになっているが,
将来買取り価格が下がるならば,需要家はメリットがなくなるので,
導入しようというインセンティブを維持するためには,
ある程度の高価格で買取りが行われるという前提が必要となる.

さて,現在は,余剰電力だけを購入しているが,
検討されているのが,太陽光発電で発電した全量を
電力会社が買い取るという「全量買取り制度」である.

この場合,投資の回収時間が短くなり,ペイバックされたあとは
利潤を生むわけだから,導入する需要家は多くなるだろう.
そして太陽光発電の導入量は増加することが期待できる.
しかし,電力料金も上がることは間違いない.
太陽光発電を導入できるほど家計に余裕がない家庭が
損をすることになるだろう.
(まぁ,我が家なのだけれど)

すでに政府の中で,「全量買取り制度」については
検討が進められており,「再生可能エネルギー全量買取PT」の
報告がされていて,3月号の雑誌「OHM」(そういう雑誌があるのです)にも,
太陽光発電2800万kW導入の際に必要となるコストの
ケーススタディの結果が掲載されている.

太陽光発電の出力の不安定さ(天候が変われば発電量が
大きく変化する)を補償するために,蓄電池が必要なことは
このブログでも何度も取り上げているが,
コストが少なくて済む電力会社が系統側に
蓄電池を一括して導入するというケースで,蓄電池コストは
15兆円必要だと試算されている.
(1000万kW以上導入されたとき以降,蓄電池が必要)
需要家側で蓄電池を備える場合には,
45.4~56.7兆円の蓄電池コストがかかることになっている.

さすがに,これではコストが大きすぎるので,
太陽光発電の装置に,電力が余剰する時間帯においては
出力を抑制する機能を付加することが考えられている.

年間14日間だけカレンダー機能などをつけて
太陽光発電装置が出力抑制をすれば,
必要な蓄電池コストは2.8兆円程度に収まると試算されている.
しかし,こうした機能を本当に各装置に付加できるのだろうか?

さらに,この試算は2800万kW導入の場合であることも忘れてはいけない.
1000万戸に導入するとの場合,一戸あたり標準的に4kW
だとすれば,4000万kWの導入量となり,上記試算よりも
ずっとコストが必要となることが予想される.

そして,そのコストは,電力料金や税金となって,
私たちの生活に影響を与えるのである.
(少なくとも各家庭にもうひとつずつは電力計が必要になる)

ふぅ~.
またブルーになってきた.
私の考えでは,もう少し技術の進展を待ってから
再生可能エネルギーへのシフトを進めたらよいのではないかと思う.
拙速な政策にならないよう,祈っている.


#実は,電気料金の話には限らず,
太陽光発電の大量導入には,まだ数々の問題が残されている.
技術的な問題についてはいずれ日をあらためて.

#蓄電池ではなく,火力で調整力を持たせることも可能だろうけれど,
CO2の問題と燃料費の問題,そして燃料の安定確保の問題などが
大きい.しかし,現状は火力でしのぐしかないのだ.
今年の夏,原発が止まっていたとしたら,
電気料金がまた上がるのだろうなぁ.ふぅ...

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