奈良を訪れた際に夕方の散歩の途中,なにかいわくのありそうな石を見つけた。碑に「宝蔵院胤栄守り本尊 摩利支天石」とある。早速調べてみると,宝蔵院流槍術の創始者 胤栄が守り本尊摩利支天として祀った石であるとのことだった。
私は「おー,宝蔵院胤栄ゆかりの石なのか」と感慨深かったのだけれど,一緒にいた学生はあまりピンとこなかったようだった。
たしかに,「宝蔵院流槍術」といっても現在ではあまり知られていないかもしれない。十文字鎌槍とかいっても,最近ではほとんど見ることがない。以前は宮本武蔵のドラマなどがあると胤栄ではなく日観や胤舜との絡みがあって,そこで知る機会があったりしたのだけれど(私もそうだった),最近ではめっきり知名度が低くなっている。
胤栄は猿沢の池に映った三日月をみて,十文字鎌槍を編み出したと言われる。槍といえば宝蔵院といわれるまで有名だったらしい。吉川英治の宮本武蔵の中では,日観という老僧が武蔵の殺気に応じて殺気を返したために武蔵がそれを感じて飛びのいたという話が出てくる。市川海老蔵が主役だった宮本武蔵では,たぶん長門勇が日観で得意の槍術を披露していた。役所広司版だと誰が日観を演じていたのだっけ,覚えがない。魔界転生の中では,転生した化け物の一人が宝蔵院胤舜だった(沢田研二の映画では,室田日出夫が演じていた。槍で立ち回りをするのだけれど,早々に柳生十兵衛に切られてしまうのだけれど...)
今は宮本武蔵のドラマなどないから,そんな僧が修練した槍術があったなんて知らない人が多くなったのだろう。しかし,私はこの石をみて久しぶりに宮本武蔵の小説・ドラマを思い出し,なんとも言えない感慨に浸ったのである。
宝蔵院の摩利支天石。なぜこの石を祀ったのかは説明がなかった。 |
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