2024年9月1日日曜日

怖い絵本

 「怪談えほん」シリーズ(岩崎書店)というものがある。私はもともと絵本が好きだから,最初にこのシリーズを図書館で見つけたときは,たいへん素晴らしい!と喜んだものである。なぜって,子供の頃にこうした恐怖を体験するのは実は非常に大切で,この世界には「恐ろしいもの」「悪いもの」「悪意があるもの」「わからないもの」が存在することを理解することができるから。

監修は怪談のアンソロジストとして有名な東雅夫,そして作者(画家も含めて)には,宮部みゆき,恩田陸,京極夏彦,小野不由美,佐野史郎,伊藤潤二など超一流が担当している。たぶん各作者は腕によりをかけて「怖い絵本」の競作となるだろう。これがワクワクしないでいられようか。

刊行が始まった2011年から案の定たいへんな話題になって,現在では第3期まで全部で13作出ているらしい。私はどれも読んでみたいと思っているけれど,そのうちの数作しか読んでいない。しかし,このシリーズは,NHKのETVで「怖い絵本」として不定期にドラマ化されていて,それを見るのが楽しみになっている。NHKのドラマは10分ほどなのだけれど,怪談同様のうまい語り口で絵本がアニメとなって語られる素敵なドラマである。ドラマの方はすでに20作以上つくられているから,ドラマ化されているのは「怪談えほん」シリーズだけではないのだろう。

まず絵本のアニメ化が素晴らしい。原作の絵が動いているように作られていて,それが世界観を壊さずに怖さだけが増幅されている。そして,ドラマパートも素晴らしい。主人公(絵本のパートの朗読)は,だいたい若手の俳優さんたちであり,こちらも作家と同様に各人で演技を競っているように思える。このドラマパートの演出も凝った作りになっていて,見ていて感心することが多い。

このドラマを一緒に見ている親子は幸せだなと思う。ちょっと怖いという体験を一緒にできることは,親子の絆をたぶん強くしているのだろうから。こうした優れたコンテンツがもっとみんなに知られればよいのになぁと切に思う。

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