先日参加した研究会において,データの捏造問題が話題になった.
データの捏造をふせぐには,
コミュニティーの厳しい相互レビュー,チェックが必要だということなのだが,
果たして本当にそうなのかという話が出た.
すなわち厳しすぎる環境が,
データの捏造を強要することもあるのではないか,
という意見であった.
この意見にはいろいろと反論が出て,
やはりデータの捏造を防ぐためには,
厳しい相互チェックが必要なのだということになったのだが,
私は,周囲のプレッシャーがデータを捏造するということも
ありうるのかなぁと初めて思い至ったのであった.
私が関係している分野は,
電気工学,パワーエレクトロニクスである.
電気回路の世界というのは,
実は数値シミュレーション(回路解析ソフトウェア)で,
かなりの精度で動作が解析できてしまう.
実験結果と比較しても,
どちらがシミュレーション結果なのか,
わからないくらいなのである.
また,論文では,その回路トポロジー(構成)と
制御法について具体的に明らかにするため,
シミュレーションによって
誰でもそれを比較的簡単に確認することができる.
(というか,ほとんどシミュレーションをしなくても
おおよその動作が推測できてしまうものである)
すなわち,誰でも検証できるということなる.
この辺が化学や生物学,実験物理学などと違うところである.
だからデータの捏造のしようがない.
その辺りが,私が捏造問題に疎い理由なのだろう.
したがって,周囲の状況に強要されて
データを捏造するなどということなど,
全く思いもよらなかったのである.
しかし,捏造する人の良心の呵責といったら,
推し量るこちらがかわいそうになるくらい
つらいものだろうと思う.
捏造したデータは素晴らしい結果で,
その結果,引用の回数が非常に多くなる.
その業績が賞賛される一方で,
だれも追試験ができず疑念が持たれるようになる.
誰も再現できない唯一のデータとなるのだから
ますます引用の回数が増えていく.
引用回数が多い論文は捏造を疑えとまで
言われているらしいのである.
その結果,内部告発や再査読を経て
データ捏造と認められてしまう.
学界からは追放される.
いままでの賞賛は侮蔑へと瞬時に変わってしまう.
本当に悲しい結果である.
電気回路を相手にしている私などは,
データの捏造のしようがないのだけれど,
似たようなことはどこにでもあるのではないかと思う.
気づかぬうちに,おかしなデータを取得している可能性だってある.
数値シミュレーションにいたっては,条件を間違ってしまえば
あり得ない結果が導かれることもある.
こうしたことを常に忘れず,どこにでもある落とし穴に
十分気をつけなければならない,と強く思うのである.
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