2007年9月27日木曜日

プロジェクトXは工学にとって福音となったのか

工学離れが深刻である.
文科省の調査によれば,この10年で
工学系志願者の数がほぼ半減したのだという.
一方,医学,薬学は増加し,
看護,医療,保健などの分野は倍増している.

これは高校生が不透明なこの世の中で,
資格などに魅力を感じているからだと推測されている.
また工学は分野が多岐にわたりすぎており,
高校生からは内容がよく見えないといった理由もあるのだという.

内容が分かりやすい建築工学科など
デザイン系は工学系のなかでも健闘している.
一方,電気や機械といった古くある分野は,
かなり苦戦しているのが現状である.

ちょっと以前のことになるがNHKのTV放映で
「プロジェクトX ~挑戦者たち~」という番組があった.
私も最初のころは,その面白さに
毎週欠かさず見ていたものである.

このころ,よく言われていたのが,
この番組によって
理工系離れに歯止めがかかるのではないか,
というもの.

私もそれを期待していた.
それでもこの工学離れ.
どうしてなのだろうと思っていたのだけれど,
数年前,ある予備校の方からのお話で納得した.

その方のお話によれば,
プロジェクトXは確かに素晴らしい.
感動する.
しかし,親は子供たちにあのような苦労をさせたくない,
と思うのだそうである.
だから理数系の科目の成績が良いと
医薬系への進学を勧めるのだという...
(おなじ医学でも苦労が予想される
産婦人科,小児科などの人気がないのは,
周知のとおりである)

なんとあの福音とも思えたプロジェクトXは,
実は工学離れを加速させていた
のである!

親からして子供に楽をさせようと考えている.
確かに理工系は,つらいこともある.
それでもやはり面白い分野なのだと思うのだ.
日本人はとくに,ものづくりに向いている国民性なのだと思う.
しかし,苦労が報われていない,という印象も否めない.
マネーゲームで巨額の富を稼いでいる人たちを横目で見ながら,
ひたすら地道に工夫を重ねている人たちは
やはり報われていないような気がする.

では,理工系離れを止めるにはどうすればいいか.
簡単である.
私はなんども言っている.
理工系の給料を今の倍にすればいいのだ.
健全な苦労が報われる健全な社会になればいい.

ものづくり国家というスローガンを挙げている日本なのだから,
もっと工学者が優遇されてもいい.
私はずっとそう思っている.

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