「燃えよドラゴン」の冒頭,ブルース・リーはサモ・ハン・キンポーとの総合格闘技のデモ試合を行ったあと,少年にハイキックを教えることを通じて,武道の極意を伝えようとするシーンがある。
"Don't think. Fee_____l‼"
のセリフがつとに有名である。この言葉については多くの人が語っているし,そもそも武道としては基本の話だし(できるできないは別にして),そして「燃えよドラゴン」公開から50年以上経った今でも武道界隈ではこの言葉はミーム化しているので,私はここでは書かない(実際,なにかを語れるほど私は実力がないし)。
しかし,作中,この後にブルース・リーが少年に垂れる説教についてはあまり知られていないような気がする。
"It’s like a finger pointing away to the moon.
Don’t concentrate on the finger,
or you will miss all the heavenly glory."
(ネットから拾ってきたので,詳細は間違っているかも。しかし大意はあっているはず)
これはもちろん有名な禅の言葉「指月の指」から来ているに違いない。「指月の指」とは,月を指さす指はあくまでも手段,方便であって,大事なのは月,すなわち真理,悟りである。「手段」にこだわって,「悟り」から遠ざかることを戒めた言葉だと私は理解している。いかにも哲学科に進んだインテリなブルース・リーらしいシーンである。
そんな理由もあって「指月の指」という言葉を私は大好きなのだけれど,世間的にも「指月電機製作所」という会社もあるくらい有名である(指月さんには日本原子力研究所時代お世話になった)。
さて話変わって,「核融合」(フュージョンエネルギー)が,内閣府が定めるムーンショット目標の10番目に選ばれた。ここで「ムーンショット」とは実現が困難な野心的な目標という意味で使われているらしく,どうもケネディ大統領が月着陸計画という壮大な目標を設定したことに由来するらしい。
しかし,この話を聞いて私は「指月の指」をすぐに思い浮かべた。核融合において「月」を指さし,みながゴールに向かって進むことができるのだろうか。「指」にこだわって「天上の栄光」(the heavenly glory)を見失ってしまわないだろうか。そんな心配をしてしまうのである。
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