2009年10月5日月曜日

直立する牛,くだん

座敷わらしで有名な旅館が全焼してしまったとの
ニュースを読んだ.
座敷わらしは出て行ってしまったのか.
伝説によれば,座敷わらしの去ったあとの家は,
だいたいさびれていってしまうことになっている.
その旅館の方々はそうでないことを祈ります.

さて,こうした座敷わらしの伝説というのは
全国あちらこちらにあるようで,
有名なのは,柳田国男が遠野物語で
紹介したものであるけれど,
私もこのブログで何度も言及している
怪談蒐集本「新耳袋」でも同様の話がいくつか
収録されている.

座敷わらしは,家にいるときはよいけれど,
いなくなったときのことを考えると,
むしろ最初からいない方がよいような気もする.
いや,やっぱりいた方がいいか...

最近読んだ「新耳袋」第9集で特に印象に残ったのは,
阪神大震災後に,六甲山麓の高速道路他で
出没情報が複数寄せられたという,
「赤い着物を着た直立した牛の群れ」の話である.
震災後に応援で送られた警備会社の警備員たちの
報告書の中に20件ほど含まれていたのだという.
六甲の山側で,高速道路などに霧がでて,
その霧の中に二本足で直立して,赤い着物を着た牛の群れ,
あるいは単体が目撃され,報告されている.

この「牛」というところがミソなのだ.
神戸近辺には,「くだん」と呼ばれる妖怪の話が伝わっている.
これが「件」すなわち,人と牛の妖怪とのことで,
その出現は,不吉なことがある前ぶれなどと言われている.
いかにも新耳袋の話に関係ありそうなのである.

ただ,新耳袋の作家二人はもちろんその道のプロだから,
そうした背景は重々承知で,この話を載せているのだろうけれど...
「神戸」と「くだん」.
この二つはずっと気になっている.

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