2009年11月11日水曜日

鷲田総長のお話

11月7日(土)には,関西支部連合大会において,
大阪大学の鷲田清一総長の講演会があった.

鷲田清一総長の講演でのお話を
ここに備忘のためにまとめておく.
(すみません,今回は箇条書きだけです)

■教養とは

・教育のために与える質問は,
「孤立した問い」ではなく,「生きた問い」で
あるべきである

・「教養」とは,生きるときに力になる知恵や技術である

・「実学」とは「すぐに役立つ学問」を意味するのではなく,
「時代の問題と切り結ぶための知恵」である

・「道徳」は「実学」である

・教育とは,以下の4つを見極めることができる技術を
身につけることである.
  - なくてはならないもの
  - あってもよいがなくてもよいもの
  - なくてもよいもの,なくしてもよいもの
  - 絶対にあってはならないもの

・上記4つを身につけることは,「価値の遠近法」を
身につけることである.

■世の中には正解のない問題が多い

・政治において,AとBの施策があり,どちらを行うか,
あるいはどちらを先に行うか,ということには,
正解は無い.こうした正解の無い問題に決断できるには,
政治的センスが必要である

・正解の無い問題というのは,介護,介助の場合にもある.
介護をうけるものとその家族においても,全く異なる考えで
あることが多い.解は複数あり,正解はやはり無い

・芸術の世界でも同様.「わからないものをわからないままに
正確に表現する,対処する」というのも芸術である

・対立する解が両立することもある

・「生きる意味は何か」という問いも正解が無い代表的な
ものであるが,これは死ぬまで問い続けることに意味がある
という問いである

■大学における「学び」の意味

・「わからない」という状態に耐えることができる
体力(知的体力)を身につけるためである.
それは潜水という苦しい状態に耐えるために
肺活量を大きくすることに似ている

・ひとつの問題に対し,自分とは関係の無いところから
補助線を引くことができることが必要である

・他の視点をいつでも持てることが大切である

・一方で教育の極端な細分化を危惧している

・教養なしには工学は勉強できない

・大学院の学生にこそ,上位の学生になればなるほど
教養教育が必要である

■大阪について

・大阪大学は民衆の力によって設立されたというユニークな
特徴を持つ

・懐徳堂 (1724年創基)は5人の商人が拠出金を負担してできた
- 上下関係なし
 - 基礎学問(天文学,物理,倫理)を重視した
 - 基金の運用で運営されていた
 - 授業料は自分が出せるだけ

・日本で初めてシェークスピアが上演されたのは,
大阪における人形浄瑠璃であり,
「この世の沙汰は金次第」(ヴェニスの商人)だった

・京都や大阪(上方)の学問の伝統として,
キーワードは「おもろい」である
もうひとつのキーワードは「リベラルティ」であり,
市民の自治という特徴である

・寄付文化も特徴

・大阪のマーク「澪つくし」は,もともと
川に立っている標識であり,船が通ることができるのに
十分な深さがあるということを示すものだった
「身を尽くし」にもひっかけている


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以上,簡単にまとめておく.
なかなか興味深いお話で,いろいろ印象に残った.

ところで,鷲田総長はファッション論もご専門で,
たしか着用されているスーツはヨージ・ヤマモトでは
なかったかな.
講演当日もかっこいい服装だった.
まぁ,執筆時はパンツ一丁で酒を飲み飲み
ペンを走らすといううわさもあるけれど...

またいつか,総長のお話をお聞きしたいものである.

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