2010年6月30日水曜日

マイクログリッド導入のメリットは

仕事は山積しているのに,
睡眠不足で頭痛がひどい.
昨日はサッカー中継を見なければよかったと反省.
あぁ,どうしよう...

ところで今日は,Ernest Orlando Lawrence Berkeley
National LaboratoryのDr. Chris Marnay氏が
来学されて,マイクログリッドに関するレクチャーを
行ってくれた.

世の中,スマートグリッド流行りで,
マイクログリッドという言葉の影が薄くなったような
気がするけれど,マイクログリッドは
スマートグリッドの重要な一要素であって,
今後も変わらず注力して研究を進めていくべき
課題である.

マイクログリッドというのは,種々の分散電源
(太陽電池,風力,燃料電池,ガスエンジンコジェネ,
ディーゼルエンジンコジェネ等)を組み合わせて,
局所的な電力ネットワークを構成し,
それを(通常一点で)バルクの電力系統に継続した
システムで,マイクログリッド内で電力変動等を
うまく調整することによって,バルク系統に影響を
与えず,出力が不安定になりがちな自然エネルギー
発電を導入していこうというものである.

通常自然エネルギーの変動による電力変動は
バッテリなどの電力貯蔵装置によって補償されるから,
マイクログリッド内の電力の品質,信頼性は
一般的に高いものとなる.
もちろん,バルク系統が停電に陥っても,
マイクログリッドは自立して運転を継続することができ,
特に供給信頼性の向上が期待できる.
今後も自然エネルギー発電の大量導入が促進されていく
のであれば,マイクログリッドは不可欠な研究であるといえる.

本日のレクチャーを聞いて思ったのは,
マイクログリッドの費用対効果の評価は難しいということである.
マイクログリッドにすれば確かに電力の信頼性は向上する.
しかし,電力の信頼性は一意には決まらない.
実際のところ,コストをかければかけるほど
(電力貯蔵装置や補償装置を導入すればするほど)
電力の信頼性は向上する.
では,どこまで向上すればよいのか?
そしてその信頼性向上は,かけたコストに十分見合う
ものなのか.
その評価をどのようにして行うべきなのかが
なかなか見えてこない.

ユーザが求める電力の信頼度も,
その場合,場合によってまちまちである.
なので,各ユーザに合わせたマイクログリッドの設計が求められる.
このようにオーダーメードで作られた
マイクログリッドの費用対効果の客観的な評価は
そもそも可能なのだろうか?
すべてのユーザが求める信頼度を数量化して
客観的に評価できるわけではないのだ.

しかし,結局,それが出来ない限り,
マイクログリッドの良さを社会に
アピールすることは難しく,
誰もがそれを導入しようという機運は
盛り上がらないのではないだろうか.
そんなことを考えた.

ではなぜアメリカはスマートグリッドでここまで
盛り上がるのだろうか.
それは,そこにビジネスが成立するからである.
アメリカにおいては電気料金が変動制で
決定されたりする.
スマートグリッドを導入すれば,
うまくデマンドをコントロールして電気料金を
安くあげることができる.
そして,それを実現するシステムを売ることで
商売が成り立つのである.
日本ではちょっと考えにくいことである.

すなわち,日本ではマイクログリッド,
スマートグリッドを導入するメリットは
目に見える電気料金という形で現れないために,
そこに大きな導入のためのモチベーションが
起こらないのである.

信頼度があがるといっても,
そのメリットが(そして費用対効果が)
定量的に評価できなければ,
マイクログリッド,スマートグリッドの
日本での導入は遅れることだろう.

加えて言えば,その電力の供給信頼性の高さは,
日本はすでに世界でトップクラスなのだ.
いまさらさらにコストをかけて向上しろというのか.
結局,導入のメリットはますます見えにくいものとなっている.
(だから日本の電力会社はスマートグリッドに対して動きが鈍い)

まぁ,こうした課題を解決するのが
私たち研究者の仕事であるのだけれど.

ということで,今日はそんなことを思った.
世の中には,コストという尺度にまさるものは
なかなか無いのである.

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