そして,ついこの間,「くるり」のメンバーである岸田繁が書いたという「交響曲第1番」を全曲聴く機会があった.岸田繁の多才さを再認識した.
交響曲第1番は,五楽章構成でたぶん演奏に40分~50分くらい要するのではないかという大曲である.初めて聴いた印象は,意外に現代音楽的ではなく(もっと現代風なアレンジをするかと思ったけれど),それでいてベートーベンやハイドンのような古典的な形式でもなかった.私の個人的なイメージでは,国民楽派の五人組やカリンニコフに近い民族的な響きがあったように思う.
古典的な交響曲の形式(急速楽章,緩徐楽章,舞曲,急速楽章ーコーダという流れ)というよりも,マーラーの交響曲のような連続する交響詩といった構成であって,それは岸田繁のマーラー好きを思い起こさせる.
だから,聴き終わった後にスッキリ感というのはちょっと少ない(「ラフマニノフ終止」とまではいかないにしても).しかし,お腹いっぱいという感じはする.それも不味いものを食べた気分はせず,街のおいしい洋食屋さんのメニューをたっぷりと堪能したという感じ.
少しとらえどころのない音楽ではあったけれど,また次に聴いてみたいような気もする作品である.岸田繁の才能にあらためて感動した.
しかし,「くるり」は一体どこへ向かっているのだろうか.無国籍どころではなく,無ジャンルの音楽になりつつあるのかもしれない.
#聴いたのは
岸田繁「交響曲第一番」
指揮: 広上淳一
演奏: 京都市交響楽団
2016年12月に京都で行われた初演のライブ録音だった.
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