2017年6月6日火曜日

眠狂四郎「円月殺法」とは

眠狂四郎の剣術といえば,剣を正眼から下段に下ろしそこから円を描くように剣を回す「円月殺法」である.相手はスキだらけのその構えに我慢できなくなり(あるいは光に惑わされて)斬りかかると,後の先をとられて狂四郎に斬られてしまうという技である.

もちろん架空の技なのだ.
そもそもそんなスキだらけの構えなんて怖くてできない.ただ伯耆流の技に似たようなものがあるとの話である.では,原作者の柴田錬三郎は伯耆流をモデルとして円月殺法を編み出したのだろうか.

いやそれも違うと思う.こんなエピソードを聞いたことがある(あいまいだけど).

市川雷蔵(だったかな.とにかく狂四郎を演じようとする俳優)が,円月殺法を映像化するにあたり,柴田錬三郎に尋ねたそうである.

「剣で円を描く時,回す方向は刃から回すのでしょうか.峰の方から回すのでしょうか」

柴錬は,「そんなこと考えていなかったよ」と答えたらしい.結局,なにかの形をを見てモデルにしたということではなかったということだろう.小説では細かなことを書かなくてもヒーローは敵を斬ることができるものである.

ちなみに市川雷蔵も田村正和も円月殺法は,下段に下ろした剣を一度その場で刃を返し,その後,時計と反対方向に峰の方からゆっくりと回していくことになっている.

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