7月1日で香港が中国に返還されてから20年になるのだという.そうだ,すっかり忘れていたけれど,1997年,私はこの香港返還を記念して作られたタン・ドゥンの”Symphony 1997”のCDを購入していたのだった(ちなみに金色の紙のジャケットにCDケースが入っていた).
タン・ドゥンは当時,「飛ぶ鳥を落とす」という形容がぴったりの新進の現代作曲家で,オペラ「マルコポーロ」を作曲し世界的な注目を浴びていた.その彼が依頼を受けて(誰から?),香港返還の式典で演奏するための交響曲を作曲したのが,この曲である.
現代音楽といってもこの曲は非常にわかりやすい作品で,児童合唱やチェロのソロ(式典時にはヨーヨー・マが演奏した),古代中国の楽器などがオーケストラに加わって演奏される.第一曲の親しみやすい音楽は,ベートーベンの第九を思い起こさせ,本曲が人類の友好と平和を祈っているのだと思わさせられる.香港の返還に当時は希望があったのだ.
しかし,現在の香港はどうも複雑である.20年経って経済は中国に追い越され,自由も制約され始めた.この先どうなるのかよくわからない.でも20年前には希望があったのだ.それはどこへ行ってしまったのか.
その後,タン・ドゥンは,映画「グリーン・デスティニー Crouching Tiger, Hidden Dragon」や「HERO」(キムタクじゃないやつ)などの音楽を担当したりして大活躍していたのだけれど,最近はあまり名前を聞かない.指揮者としての活動はしているようだけれど,曲の新作は出ているのかよくわからない.才能にあふれていたことは間違いないので,日本にもぜひ来て欲しいと思う.
2017年6月24日土曜日
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