2022年11月20日日曜日

回路 黒沢清:ネットを通じて死者の魂があふれ出す

 映画「CURE」を紹介したので,黒沢清監督つながりで,

「回路」(監督:黒沢清,主演:加藤晴彦,麻生久美子,2001年)

という映画を紹介したい。

怖いと評判の映画なのだけれど,私はそれほど怖くなかった。「CURE」が大傑作過ぎたからなのか,少し拍子抜けという感じだった。

主人公たちの周りの人々が,黒い影を残して消えていってしまうということなのだけれど,ストーリーの設定が,死者の魂の数があの世のキャパシティを超えてしまったのでネットを通じてこの世に溢れ出てくる,というもので(輪廻転生はないらしい),なんというか,なかなか難しい。ただ,「黒い影を残して消える」,「知らぬ間に接続されてしまうサイト」,「ネットに接続されている怪しい人物たち」,「赤い梱包テープで目張りされた開かずの間」,「絶望して自殺」などのエピソードが不穏な雰囲気を演出していていい感じだった。

ストーリー自体は難解で,最後は世界の破滅につながるような壮大な話につながるのだけれど,いかにもチャラい男の加藤晴彦と普通の女の子である麻生久美子の視点で最後の方まで話が進むから飛行機が墜落するような世界の終わりに,観ている方は驚いてしまう。

設定も面白く,雰囲気を素晴らしいけれど,好き嫌いは分かれる映画と思う。ただ映画は世紀末から21世紀の始まりの頃の時代の雰囲気をよく表していて,特に女の子の服装が目をひいた。有坂来瞳が意外に良い演技をしていた。麻生久美子は現在と雰囲気が違っていて最初誰だか気づくのに時間がかかった。そして加藤晴彦の彼女(?)となる小雪の美しさが記憶に残る。

21世紀の始まりにこの映画が公開されたことには意味があるような気がする。

私の評価は,★★★☆☆ (星3つ。5つが満点)

#アメリカでリメイクされたらしい。タイトルは”PULSE"。"Circuit"ではなかったらしい。予告編を見ると,コケる女性の幽霊,飛び降り自殺のシーンなどは踏襲されているようだ

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