50歳になった頃,自分の体術的なピークは50代半ばくらいだろうと思っていた。つまりは人生で私が一番武術的に強い時期がその頃に来るのだと思っていた。たしかに,50歳になった頃は体力的には衰えて始めていたけれど,技術的にはまだまだ伸びしろがあると思っていたし,事実,日々の稽古の中で新しい発見などもあって,これからまだまだ上り調子だと思っていたのである。
しかし,五十半ばをすぎた今,すでに下り坂にあることを実感している。50歳を過ぎて職場が変わり稽古量が圧倒的に減ったこと,そして度重なる怪我,病気などで体力が思ったよりも急勾配で衰えていること,などが原因なのだけれど,現在の自分は50歳の頃の予想よりずっと下回っている。
気力も衰えている。道場に立って自分の技を試すことにゾクゾクする喜びを感じることもなくなったし,そもそも受身をとるだけで疲労を感じるようになってしまった。もちろん,今後も技術的には進展があると信じたいが,体力・気力の衰えが技術的な上達を上回り,総合的にはどんどん弱くなっていると感じられるのである。今後,稽古は,「強くなる」ためだけでなく「人生を楽しむ」ことも目的となってくるのだろう。
私は,池波正太郎の作品「剣客商売」の主人公 秋山小兵衛のような人生に憧れている。老いてもなお強い。そして世俗を離れず陸沈する。それが夢だったのだけれど,なかなか理想どおりにはいかないようだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿