訪ねていった親戚の姉妹は,私を東京旅行の最後に新宿の三角ビルに連れて行ってくれた。ビルの上階の見晴らしの良いレストランで,最後の夕食としてハンバーグステーキを食べたのである。
テーブルにウェイターがやってきて,私はハンバーグを頼んだのだけれど,そのときにソースを聞かれたことに驚いた。それまでハンバーグの味付けといえば,焼いたときに出てくる肉汁に,中濃ソースとトマトケチャップを混ぜて作る家庭ソースしか知らなかったので,デミグラスなんて言われても味を想像することができなかった。
次にサラダ野菜が給仕さんが押してくる移動式ワゴンに乗せられてきて,そのなかからニンジンやレタスなど各人の注文に合わせて取り分けてくれることに驚いた。ここで
「アルファルファはいかがですか」
給仕さんに尋ねられたことを今でもはっきりと思い出す。カイワレ大根でさえ新潟ではメジャーではなかった時代に,それがどんなものかなんて全く思いもつかなかった。
サラダにかけるソースだって聞いたことも無いソースばかりだった。家庭科の授業でサラダオイル,塩,コショウでフレンチソースを作ったことはあったけれど,レストランで見たフレンチソースは白いソースで自分が習ったソースとは異なるものだった。そのほか,給仕さんはサウザンアイランドソース,シーザーサラダソースなどを紹介してくれたけれど,まったく想像がつかない私が結局選んだのは「ライトイタリアン」だった。これが一番,家庭科で習ったフレンチソースに近い見た目だったからである。案の定,想像していたソースに近い味だった。
肝心のハンバーグの味なんて覚えていない。はっきりと覚えているのは,サラダワゴンのアルファルファとライトイタリアンソースをオーダーしたことだけ。でも,レストランだけでなく,その東京旅行に大満足したことはよく覚えている。
0 件のコメント:
コメントを投稿