人間の思想や信条によって世界が変わるか,という話ではなく,人間のある意識の状態がその周囲の環境に影響を与えることができるか,という話。
幕末から明治の剣豪である山岡鉄舟は座禅を組むと家のネズミたちが静かになったという話が伝わっている。棟を走るネズミをにらむだけでネズミが落ちたとか,そんな話もある。しかし,この話には続きがあって,さらに鉄舟の修業が進んだ晩年では,写経をしていると身体の周りでネズミが遊んでいたとのことである。
宗教的哲人J.クリシュナムルティは宗教を否定していたが瞑想の重要性を説き,自ら瞑想は続けていた。彼の近くにいた人たちは,彼が瞑想を始めるとその周囲では神々しさにあふれた静謐さを感じることができたのだという。
このように人間の精神の状態が,周囲に影響を与えることは事実なのだろうか。決して物理的になにかが起こるわけではない。ただその精神状態が周囲の動物に影響を与えることはありうるのではないだろうか。そして山岡鉄舟の場合のネズミのように敏感な動物にはその変化がわかったのだろう。
心身統一合氣道の宗主 藤平光一先生が広島の宮島を訪れた時に,自然に宗主の周りに鹿が集まってきたのだという。一緒にいらした師範が,修業が進むとここまでの境地になるのかと感動したというお話を伺ったことがある。これも人間の精神の状態が周囲に影響を与えていることの証左かもしれない。
私が直接ご指導を受けていた合氣道の先生の話。居酒屋で酒席をご一緒させていただいているときに,周りがうるさいとおっしゃって,「これから静かにさせるから」とおっしゃった後に先生が心を静められて,その後周囲がだんだんと静かになっていったという体験がある。実は私も別の機会に真似をしたけれども,残念ながら居酒屋はうるさいままで,まったく周囲に影響を与えることなどできなかった。
このように,なにかしらの形で人間の意識の状態が周囲の人間を含む動物に影響を与えることは間違いないと思っている(モノを動かすような超能力とかではなく)。そして,そのためには自らの心を制御できることがその第一段階であることも理解している。ただ,それを自ら実証するのには,まだ私の修業が追いついていないのだ。
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