2008年11月7日金曜日

MICHAEL CLAYTON

作家のマイケル・クライトンMichael Crichtonが亡くなったときいて,
映画のMICHAEL CLAYTONを思い出した.
たぶん英語で発音すると,
クライトンとクレイトン位の違いはあるのだろうが,
ついつい連想してしまった.

映画のMICHAEL CLAYTONの方は,
ジョージ・クルーニー主演の渋い渋い訴訟サスペンスである.
私はこれをギリシャ ロードス島からの帰りの飛行機の中で観た.
監督は,トニー・ギルロイ.
「ボーン・アイデンティティ」などの脚本で知られる.
そんなことはつゆ知らず,
眠い目をこすりこすり,暗い機中で見始めた.

最初から意味がわからない.
主人公のクレイトンは弁護士事務所に雇われている
トラブルのもみけし屋であるのだけれど,
彼がギャンブルをして,
車に乗って,
野原に馬がいて,
車が爆発して...

観ている者はどうなっているのだろうと思う.
導入の語りも思わせぶりな独白だ.
そして突然話は4日前に戻る.

このジョージ・クルーニー演じる主人公がいい.
私の好きな,借金まみれのにっちもさっちもいかない
状況のなかで喘いでいる優柔不断な男である.

そして,同僚が巻き込まれた巨大な訴訟の陰謀.
この同僚役の男優が本当にすばらしい.
ついに精神的におかしくなってしまうのだけれど,
その男の人生に救いが訪れたことが,
彼の演技から心に伝わる.
このころには,夢中になって画面を見つめていた.

ティルダ・スウィントン演じる企業の重役も素晴らしい.
脇の下には汗をかくし,お腹周りには肉がついているし,
なんというか,女の上司とはかくたるものという役作りが
こちらに伝わってくる.
(彼女はこれでオスカーを獲得したらしい)

だいたい話の流れが飲み込めるころになっても,
登場人物は皆,不安定な状況で,
観ているものも,落ち着かないまま映画はエンディングに近づく.

そして,このエンディング.
これがこの映画の一番の欠点だと私は思う.
正直,ちょっとがっかりした.
最後に,してやったり,ということになるのだけれど,
そんな結末は私は期待していなかった.
多くの観客は,それですっきりするのかもしれないが,
私は,レイモンド・カーヴァーの小説のように,
最後まで人生の苦渋を味わうような映画であってほしかった.
(まぁ,そんな映画を作ったら誰も見ないのかもしれないが)

しかし,全般的にこの映画は素晴らしかった.
一緒に観た"No Country for Old Man"とともに
深く印象に残った.
登場人物の魅力は,最後の欠点を補ってあまりあるほどである.
こうした映画が日本にも登場しないだろうかと
つくづく思う.

#この映画は残念ながら日本語の吹き替えで観た.
クルーニーの吹き替えの声が本当にひどかった.残念.
日本では「フィクサー」という題名だったそうである.


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