2007年8月29日水曜日

謙虚さ,そしてHandwavingということ

先日,リサ・ランドールさんが来日した際の
講演に関するTV番組を見た.(NHK衛星)

リサ・ランドールという人は理論物理学の人で,
この宇宙を取り巻いて異次元の世界が
(番組では5次元の世界に言及していた)
あるという説を提案しているとのことである.

実は恥ずかしながら私は彼女を知らなかった.
ハーバード大学の理論物理学で初めて女性で教授になった人で,
「ワープする宇宙」という一般向けに彼女の理論を紹介した本は,
アメリカでベストセラーになったのだそう.
容姿の美しさもあいまって,大変話題な人なのだそうである.

以前にもこのブログで書いたとおり,
私は宇宙論というものを未だ生理的に受け付けない.
5次元の世界など,よほどの考察がなければ
存在するとは言えないのではないだろうか.
だが,(たぶんだけど)彼女の著書を読んで,
5次元の世界が存在すると簡単に言ってしまう,
あるいは信じてしまう,という多くの人たちの中に
私は含まれたくないのである.

しかし,興味はある(笑).
生協に原本が置いてあった.今度トライしてみよう...

さて,番組では茂木健一郎氏が対談を行っていた.
実は,私は茂木氏が結構好きなのである.
学術的にどのような研究をされているのかは
よく知らないのだけれど,
(その辺は,その分野の研究者にお任せして)
彼の著作はいろいろと示唆に富んでいる.
賛成できる部分も,できない部分も.

その彼がリサ・ランドールについて,
彼女の研究姿勢について非常に感心していた.
それは誰からの意見も謙虚に受け止めるという
Open Mindな態度である.

私もいろいろと学会に参加してきて,
いろいろな発表を見てきた.
確かに自分の意見が否定されると,激こうする人がいる.
謙虚に人の意見を聴くことができない.

データがあるからいいのだ.
こうだからいいのだ.
つい,そう言い切りたくなってしまう.

しかし,そこには自分の理論やデータへの
過信がないだろうかという
自らを省みる姿勢が必要なのではないだろうか.
あるいはたとえ正しくても,他の研究者からの意見によって
新たな視点を得ることはできないだろうか.
そのように考え,謙虚に他人の意見に耳を傾ける態度,
それが大切なのだと私も思う.

リサ・ランドールさんも,自分の理論の限界をよく認識しており,
そうした点への指摘については,素直に認め,
議論を進めるといった姿勢をお持ちだったということだ.

茂木氏は,この話に関わって
Handwavingという言葉について言及されていた.
物理学などで使われる言葉で,
それほど厳密に正しいというわけでもないのに,
データや仮定を我田引水的に使用して,
自分の提案を良しと主張することである.
強く主張する際のジェスチャーに由来する言葉らしい.
(正しいのかな,この理解で...)

とにかくそうした態度は研究者としては恥ずべき態度である.
一流の研究者は,Open Mindな人が多い.
自分の提案の限界を知ることは大変重要である.
それが謙虚さとして現れる.
そうしたことを忘れずにいたいと思う.

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