2007年8月16日木曜日

中国の大学には,なぜ博士が多いのか

合肥工業大学の他に,浙江大学も訪問する機会を得た.
パワーエレクトロニクスを中心に研究している研究室を訪れた.

とにかくお金と人.リソースがそろっていることに気づく.
また中国の研究室というのは,企業との関係が密接で,
中国企業だけでなく,日本,ヨーロッパ,アメリカと
種々の国々の企業とも共同・委託研究を行っている.

関係が密接というのは,次のとおりである.

企業がある課題をもっていたとする.
すると企業は大学の研究室に研究を依頼する.
そこで大学の研究室はアイデアを出す.
それを企業と協力してプロトタイプとして実現する.
その結果をフィードバックして商品化が実現する.
こうして企業は利益を得ることとなり,
また大学に資金を提供することになる.
こうした正の循環が成立している.

大学は企業の研究開発部としての役割も果たしている.
これがすべてとなると研究室の運営上,問題があるかもしれないが,
多種の企業との協力関係,その上,国からのサポートも充実しているので,
大学の研究室は,十分自立を保っているようである.

やはり驚かされるのは,博士課程の学生,そしてポスドクが多いこと.
こうした人材が中国各地から集まってくる.
(ちなみに浙江大学は,北京大学,精華大学と並ぶ中国トップ3の大学である)

中国では,博士号を取得すれば給料はぐっと高くなる.
またポスドクで経験を積めば,さらに査定は高くなる.
そうしたキャリアパスがあるために,
彼らは一生懸命努力しているのだ.

一方,日本ではどうだろう.
博士課程に進むことは現状非常にリスクがある.
就職の口は少なく,給与で優遇されることもない.
したがって生涯賃金は下がるし,
下手をすると会社からうとまれる存在になってしまう.
よほどの変人しか博士課程に進学しないことになる.

日本でも,博士課程の地位を高める必要がある.
単純に言えば給料を上げるべきだ.
ひとつの手としては,中国やアメリカのように
修士課程では学生に研究をさせず,
講義だけ受ければ良いということにしてはどうか.

研究能力がある人材を得るためには博士課程修了者を
取るほかはないようにするのである.
中国・アメリカでは,だから博士課程修了者の地位が高くなるのだ.
日本もそれにならえば良いだろう.

博士課程の優遇.
そしてポスドクになれば優遇されるというキャリアパスの確保.
こうしたものが整わない限り,
日本の大学の研究室で,博士課程・ポスドクという人材の蓄積は
難しいのではないだろうか.

浙江大学の研究室で,一生懸命に研究している学生・ポスドクの姿を見て
日本の大学の研究室の行く末に非常に危機感を持ったのである.

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