2009年1月19日月曜日

パブリック・アクセプタンス(PA)の重要性

先週の金曜日は,岐阜の土岐市にある
核融合科学研究所(NIFS)に出張してきた.

やはり土岐市は肌寒く感じられたが,
その分,空気も少し澄んでいたような気がする.

久しぶりに訪れるNIFSなのだが,
バスの時間の関係で,急な坂の下にある
バス停(小谷口)から15分くらい歩かねばならなかった.
これがかなりきつくて,日曜日には
(翌日の土曜日ではないところがミソ)
ふくらはぎが筋肉痛でつらかったくらいである.
真夏にこの坂を上っていたら,途中で倒れるかもしれない.
冬の寒い時期で良かった.
それでも会議室に到着したときには
汗がどっと噴き出ていたけれど.

いくつかの打ち合わせが終了して,
ヘリカル型核融合試験装置であるLHDを見学する.
核融合が巨大科学・工学研究であることが実感される.
ヘリカル(らせん)状のプラズマ真空容器やコイルは,
真空断熱容器であるクライオスタットの内部に格納され,
目にすることはできないどころか,
そのクライオスタットでさえ,周辺の加熱や計測の装置によって
少し垣間見える程度である.
金属の構造材とケーブルが集合している先に,
プラズマを閉じ込める本体がある.
最先端の技術の結晶であることが,詳細はしらなくとも,
この装置の目の前に立つだけで実感させられる.

今回のNIFSに来て感じたことは,
外部との交流を以前に比べ,さらに重視しているということである.

まず,NIFSからの帰りのバスが非常に混雑していたことに驚いた.
これは,同日分光計測関係の研究会が開かれていたためらしい.
私の見知った方にもお会いした.
また,私が参加した研究会では,超伝導コイルをご専門にされている
H教授にもお会いした.
外部から人を多く招き,交流を進めていこうという意図が強く感じられた.
これはNIFSが共同研究施設であるという役割を
しっかりと果たしていこうという表れなのだろう.
そうした方向性は素晴らしいと思う.

次に,子ども向けの科学実験装置を並べたスペースに驚いた.
昨年の10月に創設されたらしい.
それまでは,ちょっとした休憩スペースでしかなかったところに,
光や音,波などの実験装置が置かれたいた.
子供たちに科学により興味をもってもらうための試みであるという.
装置自体は簡単なものが多かったけれど,
工夫も感じられて,大人の私たちが見ても十分に楽しめた.
特に私が興味を持ったのは,黒い画用紙で筒を作り,
そこにスリットを作って,グレーチングシートを通して
光源を見ることによって光が分かれて見える簡易分光器である.
これがなかなかきれいで,構造の簡単さもあって,
ぜひ自宅でも作ってみたいと思った.
子供たちも,たぶん興味を持ってくれるものと思う.
その他のスペースには地区の婦人会の方々の
NIFS見学のレポートなども展示されていて,
地域の方々との交流を大事にしていることがよくわかる.

核融合研究の内容について,外部の人
(専門家も一般の人も含めて)に
広報していこうとする姿勢は
今後もますます重要になっていくことと思われる.
ただ専門家が集まって,閉じた世界で研究を進めていけばよい,
という時代はもう終わっている.
外部に対して情報を公開し
社会に対して説明責任を果たすだけでなく,
科学技術について親しみを
もってもらえるような努力を欠かしては,
この先,いつか社会から科学技術は疎外されて,
研究は制限され,人材は涸れ,
最後には日本が世界から取り残されていくことになってしまうだろう.

これは単に研究所だけの話ではない.
私たち大学においても,
注力していかなければならない分野であることは間違いない.

#NIFSの活動などは,
から知ることができます.
また,下記ページでは現在の様子(制御室のライブ)などを
見ることができます.


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