2009年1月29日木曜日

街路樹の下,マイルスを聴く

今日は午後から電気学会の調査専門委員会のひとつ,
「地球環境問題に対応する最新のパワー半導体
スイッチング技術調査専門委員会」に参加する.
アメリカの政策を見るまでもなく,地球環境問題に対する
技術開発はこれからもずっと注力されていくことだろう.
パワーエレクトロニクスがやれることは,
まだまだ沢山ある,ということを痛感.

さて,夜になって大学に戻る途中,
北千里駅から大学に向かう坂道を,
デジタルメディアプレーヤを聴きながら歩く.
(ちょっと安全上問題があるけれど)
曲は,

Miles Davis,"Bitches Brew."

照明に照らされて街路樹の枝がつくる影が
やけに生々しく感じる.
曲が曲だけに,街ゆく人のなかで
自分が別の世界にいるような気がした.
夜の寒さの中,素敵な体験だった.

先日,テレビ番組で面白いクイズをやっていた.
映像を見て,異なる音がかぶせられているのを
当てるというものである.
たとえば,ビンのふたを開ける映像に
ブタの鳴き声をかぶせる.
しかし,ちょっと聞いただけでは,
それがビンのふたをちょうど開ける音のように
聞こえてしまうのである.
そんな人間の錯覚を題材にしたクイズだった.
大根を切る音など,10問あり,
私はだいたい当てることができたのだが,
興味深いクイズであった.
専門家のコメントによれば,
感覚の7割は視覚によって支配され,
間違った音を聞いても,
それを本当の音と判断してしまうのだという.
それだけ聴覚は視覚によって
影響を受けるということなのだろう.

夜の街を,マイルスを聴きながら歩いて,
このクイズを思い出していた.
視覚によって人間の感覚が影響をうけるならば,
こうして街を歩いて音楽を聴くときには,
そのときの何を見ているかによって,
音楽の受け止め方が変わるのではないか.
この街路樹の影がまだらに落ちる道を
歩いている私が聴いているこのBitches Brewは,
いましか体験することができない音楽なのではないか.
そんなことを考えていたのである.

ステレオセットの前で聴くことだけが
音楽の楽しみ方ではなくなったのだ.
ポータブルなプレーヤは,
全く新しい音楽の聴き方を提供してくれている.

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