電気学会 電力技術・電力システム技術合同研究会に参加する.
3日間開催されているのだけれど,
残念ながら都合により,中日だけの参加.
申し訳ない.
今回は分散電源(太陽光発電とか風力とか)の
セッションと研究室の学生が発表した
系統安定化制御のセッションに参加したのだけれど,
どちらも結局分散電源の話である.
日本の電力系統が直面している問題は,
将来予想される分散電源の大量導入に対して,
どう立ち向かうかということにある.
たとえば各家庭に太陽光発電が設置されたとすると,
基本的にその発電電力は電力会社は制御できない.
電力会社の重要な仕事のひとつは,
発電電力を負荷電力に一致させるように
制御することだから,それができなくなることになる.
そのような場合,発電電力が負荷電力を上回り,
余るような状態になると,周波数が上昇してしまう.
60Hzが60.2Hzとか60.3Hzとかになってしまう.
もちろん,逆に不足する場合は周波数が下がって,
59.8Hzとか59.7Hzとかになってしまう.
誤差が0.2Hzを越えたぐらいから,
あちらこちらの工場で問題が起こるといわれているから,
電力会社が困ったことになる.
電力会社は周波数を見ながら,その発電電力を
調整するのだけれど,電力はすぐに調整できるとは
限らない.ある程度の時間遅れがあるのである.
一方,たとえば風力発電の大規模なファームが
あって,通常,原発の1/2基分くらいの発電量が
あったとする.
しかし,それが急に風が止んで
発電量がゼロになったらどうだろう.
系統からみたら,原発の半分が急にダウンしたような
状況になる.
制御が追いつかない...
ようやく発電電力が増え始めたと思ったら,
急に風が吹いたりなんかして,電力がすごく
余るようなことになってしまう.
ちょっと考えただけでも大変なのである.
(その他,配電線の電圧が上昇してしまう問題とか,
雷などで電圧が少しの間小さくなるだけで,
大量の太陽光発電や風力発電がストップしてしまう問題とか,
事故が起こっても電力を送り続けてしまう問題とか,
とにかく一杯課題があるのだ)
そうした課題を解決していくのが,
私たち電気工学者のつとめなのだ.
ひとつの解決策としては,電力を充電したり,放電したりできる
二次電池を用いて,余ったり不足したりする電力を
補うという方法が考えられるのだけれど,
みなさん,ご存じの通りリチウムイオン電池など
性能の良い電池は非常に高い.
その上,今話題のレアアースときてる.
それが簡単に解決できる問題でないことはすぐわかる.
将来,プラグイン電気自動車が普及するならば,
それらの電池を使えないか,というアイデアも検討され始めている.
今回の研究会でもそうした検討の報告があった.
V2Gと呼ばれる(ビーグル・トゥ・グリッドの意味).
私個人的には,なかなか難しいと思うけれど,
魅力的なアイデアではある.
こうした需給調整をうまく行うためには
結局,各分散電源や車などと通信を行って,
充電状態や発電状態などの情報を
やりとりしなければならなくなる.
これがスマートグリッドの正体である.
とにかく,アトランタで開かれたECCEも
サスティナブルということが中心で,
分散電源,スマートグリッドがトレンドだった.
そして日本ももちろん主たる課題なのだ.
(日本とアメリカ,欧州ではそれぞれ
スマートグリッドの性格は異なるのだけれど)
私たち電気工学者がやらなければならない仕事は
山ほどある.
あぁ,素晴らしき哉,電気工学的人生!
広島大学は西条駅経由で行く.西条は日本酒で有名な町だ. |
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