沈黙についていろいろ考えている。これまでもそのことについてブログ記事を書いてきたけれど, 私が考える最もカッコいい「沈黙」についてはまだ書いていないことに気づいた。
私が考える最もカッコいい「沈黙」は,1993年のアメリカ,スーパーボウルのハーフタイムショーにおける伝説のマイケル・ジャクソン(MJ)のものである。
その年のハーフタイムショーは特別だった。まずショーが始まるとスタジアムのスクリーンにMJが映し出され,その後スタンドに設けられた舞台の下からMJが射出される。ほんとにすごい勢いで射出されるのだ。その結果MJはジャンプして着地する。そして何事もなかったように,すたっと立ち姿をとる。すると今度は別の方角のスクリーンにMJが映し出されて,また舞台下からMJが射出される。そして着地のあと静かに立つMJ。MJが複数人いるわけがない。そう,彼らは影武者たちなのだ。
そして最後に中央に設けられたメインステージから本物のMJが射出される。すたっと着地するMJ。そしてここからがすごい。着地して顔を右に向けたカッコいい立ち姿をとったままピクリとも動かないのだ。会場の注目は当然MJに集まる。しかし何も動かない彼の姿に観客の注目はますます集まり,MJの静かさと逆に興奮はヒートアップしていく。そして次に顔だけを左に向けるまで,なんと90秒以上もMJはなにもせずただステージの中央に立っていただけなのである。それからまた数十秒間のMJの沈黙。さらに観客は熱狂していく。彼はゆっくりとサングラスを外す。観客の熱狂が最高潮に達した時に「Jam」のギターイントロが演奏され始め,MJは「アーオッ!」と叫んでとうとう歌い始める。結局,この歌い初めまでおよそ2分,彼は一言も発せず,沈黙と2,3の動作だけで,スタジアム全体の注目を集め,スーパーボウルのゲームの興奮以上の熱狂を引き起こしたのである。彼の「間」というべき「沈黙」の勝利である。
これほど沈黙を効果的に使った例はそうそうないのではないだろうか。スタジアムだけでなく,同時中継をされていた全世界の視聴者をくぎ付けにした2分ちょっとであったに違いない。「間」というものに人間が支配されることの実例であり,その影響と有効性の大きさに怖くなるほどである。
ただこの「間」を制御,支配するためには,超人的なカリスマ性,オーラが必要なことは間違いない。凡人にはちょっと難しい。。。
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