私はオカルトが好きで,夏は涼を取るために怪談が特集されるのでワクワクする。講談の世界だって,「冬は義士,夏はおばけでメシを食い」などという言葉があるくらい,「四谷怪談」(赤穂義士の話のひとつでもある)や「牡丹燈籠」,「真景累ヶ淵」など有名な怪談が語られる(落語もだけれど)。
最近は「心霊特集」という番組が作られにくくなっているらしく,「本当にあった話」や「霊能者」のような言葉を使うのがタブーのようである。小学生の頃は夏休みの昼間にテレビをつければ,新倉イワオさんの「あなたの知らない世界」が週帯で特集されていたりして,「心霊写真」や怖い話の「再現ビデオ」に震え上がっていたものである。
中学になっても,高校になっても,こうしたオカルトが大好きで,新潟市では深夜「11PM」の裏番組あたりに心霊番組を毎週やっていたのでいつも見ていた。ドキュメンタリーとして放映されていて,狐に憑かれた少女の除霊や,体に文字がみみずばれとして浮き上がってくる映像,そして金粉現象など,毎週毎週夢中になってみていたものである。(番組名が思い出せない。小松方正さんなどがレポーターとして出演されていた)
なぜこんなにオカルトが好きになったかというと,もちろん子供のころからこの世界とは異なる世界に憧れがあったからなのだけれど,極めつけは小学生低学年の頃に「世界怪奇シリーズ 妖怪大図鑑」(黒崎出版)を買ってもらったことである。内容はすっかり忘れてしまったけれど,たぶん鳥山石燕などの妖怪を下敷きに図鑑が構成されていたように思う。面白いのだけれど,こわい。でも怖いもの見たさで読みたくなる。だから私は押入れの中で懐中電灯で読んだりしていた。なんども怖くて捨てようとしたのだけれど,捨てられず,結局各ページ綴じがボロボロになるまで読み込んだ。私の妖怪観はこの本によって作られたのかもしれない。
現代の子供は「妖怪ウォッチ」は知っていたとしても,もっと陰湿な日本情緒たっぷりの妖怪や幽霊,お化けの世界になじみがないのだろうと思う。背筋が凍るような物語から安全に隔離されている。それが本当にもったいないと思う。小川未明の「赤いろうそくと人魚」のような世界こそ,日本の陰影の美しさなのだと思うのに。
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