私はワグネリアンではないけれど,ワーグナーの曲は結構好きである。とはいえ,彼のオペラをすべて通して見たことはない。そんな贅沢な時間がいつかとれればとは常に思っているのだけれど...
ということでオペラを見たわけではないとすると,私が知っているワーグナーの数々の曲は「つまみ食い」をして聴いていることになる。まあ,ワーグナーの名曲集という企画CDなどは山ほど発売されているし,一方で楽劇(オペラの一種)の抜粋版なんていうのもある。私もショルティやレヴァインなどの「ニーベルングの指輪」(通称 リング)の抜粋版を愛聴していた。まともにリングを聴くならば,四夜を費やさなければならないほど長大な作品なのだ(15時間くらい)。リングには,「ワルキューレの騎行」などの名曲がたくさん含まれているので,ぜひ興味と忍耐のある人は聴いてほしいと思う(自分にも言っています)。
さて,今回私の3曲目の葬送曲候補に選んだのは,ワーグナーのオペラ「ローエングリン」第1幕への前奏曲である。先にも書いたように私はワーグナーのオペラを通しで見たことはないから,この曲も抜粋された演奏を聴いたのみである(オペラ自体は,聖杯伝説や白鳥伝説に彩られた騎士の物語らしい)。しかし初めて聴いたとき,その素晴らしさにずっと耳をそばだてていた。
初めてこの曲を認識して聴いたのは,アメリカFOXのTVシリーズ「ミレニアム」の中でのBGMである。「ミレニアム」は西暦2000年になる少し前,世界が不安に満ちあふれていた頃のドラマで,「Xファイル」の後継作品になる。世界が邪悪なものによって影響を受け始め,不可解な事件があちらこちらで発生する。それらにエージェントが対応するのだけれど,第1シーズンは犯罪対応だったのが,第2シーズンは秘密結社「ミレニアム」の話になってかなり難解なオカルトの話になっていく。私は大好きなドラマだったけれど,第2シーズン以降人気が下がったらしく,結局第3シーズンまで作られたけれど,その後続編は製作されていないようだ。
そして,この曲は,実に霊感に満ちた神聖な雰囲気の曲で,天から降り注ぐ神の恩賜を感じられるような素晴らしい作品である。聴き終わったあともその余韻にずっと浸っていたいような静謐な曲なのである。しかし,「ミレニアム」ではこの曲に合わせて,邪悪なことが進行していくのであった。この皮肉に私はメロメロになった。そしてこの美しい曲の旋律が忘れられなくなったのである。
この曲が「ローエングリン」であったのを知ったのはそれからしばらく経った後のことである。ワーグナーの作品集でこの曲を見つけたとき,どこかで聴いたことがあると記憶を探っていったのちに,「あー,これはあのときの曲だ」と思い出したのである。あの邪悪なものがやってくるときに流れていた曲だと。
もちろん私の葬式が別に邪悪なものというわけではない。この曲が本来持つ「霊性」,「静謐さ」,「神の恩賜の美」などのイメージが葬式に似合っているのではないかと思うのである。演奏時間も9分はかからない。私の小さなお葬式にはちょうどよいのではないかと思うのである。
#「ローエングリン」には,本曲の他,「第3幕への前奏曲」(キラキラ感が素晴らしい!)や「結婚行進曲(婚礼の合唱)」(メンデルスゾーンの行進曲と並んで超有名。ただし合唱)が含まれているので,オススメである。
0 件のコメント:
コメントを投稿