2008年9月26日金曜日

「のだめ」とベト7

この1,2年,最も耳にしている交響曲は,
ベートーベンの7番(通称ベト7)ではないかと思う.
耳にするというのは,
私の場合それはほとんどがテレビであるけれど,
(今もウィンナのCMに使われている)
演奏会に取り上げられた回数もたぶん
ずばぬけて多いのではないだろうか.
たぶんそれは「のだめ」効果である.

1,2年ほど前に「のだめカンタービレ」という
テレビドラマが放映されていて,
これは私も観ていたのだけれど,
ずいぶんと良くできたコメディだった.
登場人物を演じている俳優の皆さんもずいぶんと
演奏を練習されたようで,演奏シーンも迫力があり,
全体としてたいへんクオリティの高い
音楽ドラマとなっていた.
そのテレビドラマのテーマ曲がベト7だったのである.

この曲は,クラシック愛好家にはもちろん有名なのだけど,
一般的には少し認知度が低かったから,
この人気は「のだめ」のおかげである.

ベト7だけではなく,ドラマでは
エンディングテーマのガーシュウィンの
ラプソディーインブルーの他にも,
ドラマ内で演奏された曲として,
モーツァルトの2台のピアノのためのソナタ,
オーボエ協奏曲,ストラヴィンスキーの
ペトルーシュカなどがあり,
ずいぶんと楽しく観ることができた.
このドラマでクラシックファンになった人も
多いのではないかと思う.

実際,クラシックのコンサートで,
若い人たちが増えたとの話もでていた.
(マナーが悪い人が多いということでも
評判になっていたけど.というか,
ロックコンサートのノリできていたんではなかろうか.
あるいはドラマのように,みんな身体を揺らして聴くとか(笑))
こうしてクラシック愛好者の人口が増えることは
私は大大大歓迎なのである.
なぜって,いろいろなクラシックの録音が
発売されることになるし,
(現在はクラシックのCDの売り上げはずいぶんと
厳しく,発売される種類も少なくなってしまった)
演奏会も数多く開かれることになるからである.
(あるオケが府からの助成金を減らされるという話も
なくなるだろう)
東京で毎年開催されているラ・フォルネ・ジュルネも
のべ100万人という人が参加したという.
CDの売り上げは相変わらず低いらしいけど,
このようにクラシックに興味を持つ人は
決して少なくないのだ.

そういった意味で,こうしたファンを掘り起こした
「のだめカンタービレ」は本当に素晴らしい.
実は私,恥ずかしながら今頃になって
原作のマンガの1~3巻を読む機会があったのである.
いやぁ,面白い.
夜中にひとりこっそりと読んでいたけれど,
笑い声を押し殺すのが大変だった.
そして驚いたのは,あのテレビドラマが,
原作の世界を大変よく再現できていたことである.
ところどころ設定は変わっているのだけれど,
伝えたいところはバッチリ伝わるものとなっている.
いやぁ,またドラマを観たくなってしまった.
そして原作の方もこの先,21巻まで読むのが楽しみである.

まだ「のだめ」を知らない人は
ぜひご一読をお勧めいたします.
(と今いっている私が,2年遅れという感じ.
でも,もちろん,放映当時もそれはそれで
盛り上がっていましたよ.
私を含めた周囲のオジサンにも
ファンが多かったようですし)

2 件のコメント:

  1. Dr.MIURA
    いつも楽しく拝読させていただいております。
    奇遇なことに私も今週からマンガ本「のだめ…」を読み始め、昨日21巻を読み終わりました。もちろんストーリーも面白いのですが、クラシック音楽の構造が主題を伝えるための技術として緻密な論によって支えられていることなどを知ることが出来ました。
    指揮者や演奏者には、譜面からそれらを紐解き、解釈していく楽しさが(もちろん苦労も)あるのでしょうね。
    3巻なら、まだまだ先が長いので楽しめますね!

    返信削除
  2. Chinosさん,はじめまして.コメント有難うございます.反応が遅れまして申し訳ありません.

    しかし,一週間で21巻分の「のだめ」を読まれたのですか.すごいです.私はこれからしばらく時間がかかりそうです.

    Chinosさんがおっしゃるように,「のだめ」は,いろいろな音楽的知識が詰まっているようですね.音大出身の方もそんなことを言っていました(私はこれからですが).

    そうしたところに音楽の魅力を感じることができるところがクラシックの良さかな,と思います.

    これからもよろしくお願いいたします.

    返信削除

言葉が世界を単純化することの副作用

 人間がこれだけの文明を持つに至った理由のひとつは「言葉」を用いることであることは間違いないと思う。「言葉」があれば正確なコミュニケーションができるし、それを表す文字があれば知識を記録として残すことも可能である。また言葉を使えば現実世界には存在しない抽象的な概念(たとえば「民主主...