2008年9月16日火曜日

稚内メガソーラ

先週末は,稚内にNEDOのメガソーラプロジェクトの
サイトの見学に行った.
稚内はすでに肌寒いと聞いていたのだけれど,
意外に暖かく,半そでシャツで十分だった.

このプロジェクトは,NEDOから稚内市と北海道電力が
受託して2006年度から始まった.
およそ14haの広大な敷地に(東京ドーム3個分),
5MWの太陽光発電パネルを敷き詰める予定である.
現在は,2MW分まで設置され,
残りの箇所はまだ整地作業が行われていた.

まずは敷き詰められたパネルの広さに驚く.
単結晶や多結晶,アモルファスにCISなど,
多種の太陽光パネルが試験的に使用されているため,
場所ごとに,光の反射具合が違う.
また各電池の効率の大きさによって,
同じ発電量でも必要なパネルの面積が異なる.
住宅と異なって,こうした広大な面積を必要とする
サイトでは,ちょっとした効率の違いが,
結局大きな面積の差を生むことになる.
やはり,効率向上が第一なのだ.

次にパネルを設置するための架台のごつさが印象的.
というのも,やはり稚内は積雪地.
建築基準法によれば,
稚内では1.3mの積雪による荷重に
耐えうる強度が架台に求められるのだという.
また冬季に雪が積もってパネル上に残っても困る.
そこで架台の高さも2m程度が必要とされる.
昨今の鉄材の価格高騰もあって,
架台は重要な課題の一つである.
私は,電気屋なのでだいたい回路のことだけしか
あまり考えないが,実際の設置・運用には,
こうしたプラクティカルな問題が大きいのだと
あらためて実感する.
結局,太陽光発電用インバータなどは
全体から見るとコスト的にはずいぶんと
小さな割合となるのだ.
もちろん,必須な装置で,
その効率の向上も,発電性能に大きく
影響することとはなるのだけれど.

稚内プロジェクトの良いところは,
受託者に電力会社が含まれていることである.
電力系統に分散電源を接続しようとすると,
その変動する発電電力が系統に悪影響を
与えることが懸念される.
通常は,発電設備を設置する側で
その対策をしなければならないのだが,
どうしてもそれはコスト高になってしまう.
本サイトでも変動電力補償のために
電力の充放電ができる二次電池の
NAS電池が設置されているが,
これがずいぶんと高価なのである.
もしも電力会社とうまく連携できれば,
こうした負担を軽減することが
可能となるかもしれない.

これまでの運転によって,
NAS電池を使用することにより,
この太陽光発電所から計画的な発電電力を
得ることをすでに実証しているけれど,
(たとえば500kW一定出力とか)
そこまでリジッドに制御しなくても
系統に余裕がある場合は,
系統側で吸収すればよいのではないだろうか.
今後,分散電源の導入は必須なので,
皆がハッピーになる道を
探っていくべきだと私は思う.

北海道は風力発電が盛んだけれど,
今後は太陽光発電も導入していってほしい.
稚内の日年間射量は,東京に比べて
ほんの4%としか少なくないのだという.
北海道は新エネルギーの拠点として
世界に強くアピールしていくのはどうだろう.
洞爺湖サミットも開かれたことだし.
その実現のキーとなるのは
結局のところ,電力会社の対応なのだろう.

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