2008年9月3日水曜日

電車の運転

滋味あふれる文章とは,
決して凝った修飾を必要とするものではない.
そのことをあらためて感じた本を
紹介したい.

「電車の運転 ~運転手が語る鉄道のしくみ~」
(中公新書,宇田賢吉)

著者は,国鉄からJRへと運転手として
勤め上げた方らしい.
内容は,運転手の視点から
電車の運行の仕組みを淡々と
説明するものである.

このように書くと,
無味乾燥な解説本のような感じがするが,
実際は,ところどころに
運転手としての誇りや気概,
そしてなによりも鉄道への
愛情を感じさせる文章となっている.

なにも大げさにそれらを
書いているわけではない.
運転室でふと実感したこと,
あるいは長年のキャリアを振り返っての述懐,
そうしたことが,章の端々に
ちりばめられていて,
それが単なる鉄道解説本と一線を画させている.

もちろん,鉄道のしくみ自体も,
非常にわかりやすく説明されている.
私もこの本を読んでいろいろなことを知った.
ノッチとは単なるアクセルではないこと,
閉塞運転の意味,信号の意味,
そして,運転手の心構え.

著者の意図どおり,
私も鉄道にのるときには,
運転手がなにを考えて運転操作をしているか,
そんなことに思いをはせるようになった.
「安全・高速・快適」
をモットーにどれだけの,
技術的,人的努力がなされているか...

これは,鉄道ファン,パワーエレクトロニクス,
電気工学などの関連者だけでなく,
ぜひ多くの人におススメしたい良書だと思う.

#千里中央の田村書店に,
著者直筆の色紙がありました.

#著者のホームページがあるようです.
http://homepage3.nifty.com/c6217/

#明日から出張で不在です.
次回更新は月曜日となりそうです.

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