2009年4月1日水曜日

人間の共振現象

4月1日である.
大学では入学式が挙行される.
そして私は,パソコンの中の
昨年度の電子ファイルのバックアップを取る.
年度がわりである.
また新しい気持ちで一年を始めよう.
3月は別れ,そして4月は新しい出会いがある.
新しい気持ちで会う,新しい人には,
また新しい刺激を受けることだろう.
今年はそうしたことに心を配りたい.
なにか心に共鳴できるような,
そんな人や物に出会えるかもしれない.
そんな根拠なき期待にワクワクできるのも
この春という季節の特徴である.
共鳴とか共振とかいうと
電気回路をついつい思い浮かべてしまうのは
電気系研究者の性であるけれど,
そうした現象は別に電気回路特有のものではない.
人間にだって共振現象というものがあると
私は思っている.
というと,お互いの心が響きあう,というような,
そんな素敵な人間関係を想像してしまうけれど,
それほど私はロマンチストではない(笑).
人間の神経伝達に電気が大きな役割を占めているならば,
人間の神経回路も電気回路で近似できるはずである.
ならば,共振現象も起こりうるはずである.
そういう意味で私は言っているのである.
ずいぶん以前のことなのだけれど,
テレビのアニメ番組において,
光の点滅を繰り返すシーンがあったところ,
それを見ていた子供たちがてんかんを起こすという事件があった.
全国で結構な数の子供に症状が現れたために
大きな話題となったのだけれど,
これについて前の職場の上司が,
人間の神経回路における共振現象が原因ではないか,
といったのを覚えている.
私も深く考えさせられた.
確かにこの現象は「光過敏性てんかん」として
医学的には説明されるのだろうけれど,
脳内の神経によって構築された電気回路が外部からの刺激によって
共振を起こし,許容値をオーバーしてしまったのではないか,
という仮説はたいへん魅力的に感じたのである.
このときの光の点滅の周波数は,およそ10~20Hz程度だったのだという.
人間の神経回路のインダクタンス,キャパシタンスを
等価回路的に計算すれば,そのような周波数になるのではないだろうか.
いつか実際に検討してみたいと思っている.
人間にそうした共振周波数があるかどうかはまだわからないけれど,
地球にはそうした周波数は存在する.
いわゆるシューマン共振である.
これは,地球の地表と電離層との間に
電磁波の定在波が存在することを示し,
7.8Hz, 14Hz, 20Hz程度の一次,二次,三次の周波数が
観測されている.
ここで非常に興味深いのが,これらの周波数が
人間の脳波の周波数にたいへん近いということである.
だから地球の脳波などと呼ぶ人もいるらしい.
数年前にこれらの周波数が上昇し始めているなどという
オカルティックな噂が一部で広まったのだけれど
(だから世界が破滅に向かっているなどという),
そんな事実は報告されていないと,
実際に大気の電磁波を観測している先生に
断言してもらっているので,やはりそれらはデマだったのだろう.
もし変わるというのであれば,
それは電離層と地表の距離が変化している
ということになるのであって,
そんなことが起こるのならば,
すでに世界は大変なことになっていることだろう.
しかし,そんなシューマン共振と人間の活動が
強い相関をもつなどという怪しい噂も信じてしまいそうな経験を
実は私はしているのである.
私が研究しているパワーエレクトロニクスの半導体変換器は,
周波数を任意の値に変換できるところがミソである.
例えば,交流から直流に変換するとか,
あるいは直流から交流を発生させるとか,
50Hzから,60Hzやその他の周波数の交流をつくり出すなど,
周波数を変換するすることによって,電力をより使いやすく,
省エネ化することができるのである.
電車やインバータエアコンのモータなどにおいては,
数Hzから数百Hz以上まで周波数を変化させることによって,
モータの回転速度を自在に制御しているのである.
私もそうしたモータや発電機の制御の
実験を行ったりするのだけれど,
半導体変換器が出力する電圧・電流がある周波数帯になると,
実験をしている周囲環境が不意に静かに
感じられるようになることに気づいたのである.
いや,静かになるというよりは,
すべての音がやけに生々しく聞こえ始めるのである.
インバータの音も耳元近くで鳴っているように感じる.
そこで音を発していることのリアリティが,
まるで手触りできるかのように迫ってくるのである.
最初は気のせいかと思ったけれど,
それがしばしばのことなので注意して実験するようになった.
そして変換器の出力周波数を確かめてみると,
それがシューマン共振周波数付近の7~8Hzだったのである.
実際にどのような作用が生じているのかは見当もつかない.
半導体変換器の発生する電圧・電流の周波数が,
私の脳に影響を与えるのだろうか.
あるいは世界に存在するそうした周波数の定在波を
まるでアクティブフィルタのように打ち消してくれるのだろうか.
もしこの現象の理由をはっきりできるのであれば,
インバータエアコンのモータを多極化して,
駆動する電圧・電流を7~8Hzに抑えてみたらどうだろうか.
部屋の静けさが増したように感じられるのではないだろうか.
7~8Hzは,耳には聞こえない周波数帯ではあるけれど,
雑音にまみれたこの世界から,
私たちを救ってくれることになるかもしれないのである.
これも,いつか考えてみたいテーマである.

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