2007年6月4日月曜日

ダ・ヴィンチの芸術と科学

映画「ダ・ヴィンチ・コード」の話題は
もうすっかりなくなったけど,
「受胎告知」が来日していることもあり,
まだ世間ではレオナルド・ダ・ヴィンチブームが続いているようだ。

ダ・ヴィンチについて実は私はよく知らないのだけれど,
どうも理系心をくすぐる感じがする。

「受胎告知」も遠近法などダ・ヴィンチが
科学的な分析をつくした技法が使われているという話だし,
残された彼の手稿をみると,
ほとんど理系のノートそのままである。
しかし,彼が科学的・工学的な背景をもっていたとしても,
彼の作品は人文的に万人の心を打つ。
それが素晴らしく思える。

つまり,理系心をくすぐる理由は,
科学的な分析・手法を徹底することにより,
人の心を感動させる芸術の域に達することが
できるのではないかと思わせるからなのではないかと思う。

しかし,実際はその逆ではないかと思う。
彼は,芸術を極めるために,
解剖学や工学といった科学的手法を
徹底的に追求していた。

つまり,科学を追求してそこに至ったのではなく,
芸術を追求したからこそ,
科学(医学・工学)という技術・哲学を
用いざるを得なかったのではないかと思うのである。

ダ・ヴィンチは絵を最高の芸術に位置づけていたという。
至高の絵を描くために,科学をツールとして用いたのだ。
科学は決して目的ではなかった。
これは大事なことなのではないかと思う。

総合的な知性によって彼の芸術は支えられている。
単なる専門家との違いがここにある。
(彼の時代は,芸術と科学は未分明だったかもしれないけど)

目的がはじめにある。
工学もその目的達成の一手段に過ぎない。
そうした認識の違いが研究の成果において
意外に大きな差を生むのではないのかと思う。

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