5/25出題,6/4締め切りだった電力工学Iのレポートについて,いろいろと書いていきたいと思います。
まず,問題について。
「核融合が将来社会に受け入れられていくためには何が必要か述べよ」
だいたい大きく分けて,
(1)技術
(2)コスト
(3)社会受容性
の3つの議論がありました。
回答で最も多かったのは,核融合の宣伝が足りないということ。
人々が「核」という言葉にもつアレルギーについて
言及するものでした。
これを解決するために,核融合の安全性について
社会にもっと説明していく必要がある,との意見が多く,
簡単に言ってしまえば「宣伝」が足りないというものでした。
驚いたのは,電気系であっても,
今回の講義で初めて核融合炉と核分裂炉の違いを知ったという
学生が多かったこと。
確かに高校では教わらず,また大学に入ってからも,
こうした講義はなかったのでしょう。
もっと驚いたのは阪大に大きなレーザー核融合の装置が
あるということを知らなかった学生が結構いたこと。
エネルギー量子の学生でさえ知らない人がいて,
ちょっとショックでした…。
しかし,ちょっと前までは核融合といえば,
未来エネルギーのホープと目されていて,
学生(高校生も)の人気もずいぶん高いものでした。
したがって,核融合がどういうものか
少しくらいは知っている学生が多かったものです。
少なくとも阪大がレーザー核融合の
メッカになっているという事実は
多くの阪大生が知っていました。
それがこのような結果になっているとは,
最近の「核」に対する嫌悪感が
核融合からも核分裂からも
学生たちに目をそむけさせているのでしょう。
核融合は宣伝が足りない。
実は私も学生時代に思いました。
所属していた研究室は核融合もテーマの一つでしたから,
ITER計画などは非常に魅力的に感じていたものです。
しかし,周りは誰も知らない。
世界でトップを走っている日本の活躍も知らない。
これはもったいないと非常に悔しい思いをしていたものです。
それで,大学に特別講義にいらしていただいた,
日本原子力研究所(当時)のKさんなどにも,
「なぜSSCならみんな知っているのに,
ITERは誰も知らないのですか?
原研の宣伝不足なのではないでしょうか?」
などと質問したものです。
(ちなみにSSCというのは,当時アメリカで計画されていた
Superconducting Super Collider、超伝導超大型加速器です。
計画が頓挫して大きな話題になっていました)
あれから20年たった今も,
核融合の社会的立場はあまり変わっていない,
いや,むしろずっと逆風となっているな,と
改めて思いました。
今回の講義で,核融合に興味をもつことができた,と
答えてくれた学生が多かったのがせめてもの救いです。
少しは核融合分野のお役に立てたかなと思っています。
このほか,レポートにはいろいろな意見,質問がありました。
核融合に関連したサイトなどの紹介も含め,
これから何回かにわたって(不定期ですが)
この話題に触れていきたいと思います。
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